ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

エドワード・ケアリー「望楼館追想」

<アイアマンガー三部作>がずっと気になり、そしてずっと読んでいないエドワード・ケアリーのこれがデビュー作だと聞いて読んでみる。もともとは2002年に文芸春秋から出て2年後に文春文庫になってたものを、去年創元から復刊されたものである由。

 

うむ。何かすげえの読んだな。純文学のようであり、幻想的であり、ミステリアスである。文体や章立てには独特のうーんなんだろうなあ構成があり、それだけでも十分味わいがある。

 

困ったな何ひとつ説明できてないぞ。登場人物はみなどこか常軌を逸したところがあるのはマーヴィン・ピークゴーメンガースト3部作を思い起こしたりというかツイン・ピークスみたいなんだが別にツイン・ピークスでもなんでもない。

ただ、盗癖があり他人に対して過剰に尊大でその割に社会的には脱落者にも等しく、まるで共感しきれない主人公フランシスが地下にコレクションしていた996番目の《物》に、ひどく心を動かされた。その感覚は、別に他人に説明しなくてもよいものだ。