ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

乾石智子「夜の写本師」

夜の写本師 (創元推理文庫)

夜の写本師 (創元推理文庫)

著者のデビュー作にしてオーリエラントもの第一作、だよね。「オーリエラントの魔道師たち」((http://d.hatena.ne.jp/abogard/20140223))がよかったのでその後もこの人の本をいくつか読んでみて、全部が全部合うわけではなかったのですがこれはよかったです。

一見すると幼馴染と育ての親の敵を討つため一風変わった手法で悪の大魔道師に復讐を誓うような、いわば王道な話かと思いきや、実は1000年に渡らんとする呪いと憎しみ、永遠の輪廻転生とそれを断ち切る救済の物語でした。男女間の溝は宇宙より深いってジェイムズ・ティプトリー・ジュニアも言っている。

「魔法」の使い方と使われ方、その記述や描写がいいのよね。他の作品ではドラゴンとかも出て来るけれどこのオーリエラントものに関しては魔法と魔道師以外は人間しか出てこない。そんでどんなモンスターより人間そのものが恐ろしかったりするのだなあ・・・

冒頭であっさり死んじゃう幼馴染の少女があんまりあっさり過ぎるので、こりゃ後々伏線的に登場するのだろーとか思っていたらまるでそんなことはなかった。そういう、ちょっとドライな一面も良いテイストです。