「改版」というのもあるらしいけれど(amazonで出てくるのはそれらしいのだけれど)、読んだのは平成五年刊行の文庫本(の、二十一刷だった)。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作で、これまで初期のファンタジーノベル大賞関連は色々読んでて、いくつか好きな作家や作品もあります。でも本書は未読だったのよね。理由はやっぱり「アニメで見たから」に尽きる訳で、原作とアニメはずいぶん違うとも聞き及んでいたけれど、なんでか知らずか読む機会が無かった。それを何故いまさらかと言えば理由はやっぱり「アニメを見たから」になるわけで、先日BS12で久々再放送されたのをきっかけに手に取ってみました。
成程ずいぶん違うというか、アニメの製作スタッフはこの二重にも三重にも人を食ったような怪作を、よくもまーあれほどソフトでしっとりしたラブロマンスに仕上げたものだなーと感銘を受ける。1990年という時代はスタジオぴえろ全盛期であったし、ジブリアニメ的な作風は世の中に落とし込みやすいものでもあったろうけど、偽書(偽史)であり且つポルノでもある「騙り」を削って普通の作品(普通ってなんだ)にしたとしても、一歩間違えばこれ中華風くりいむレモンになりそうなところを、よくこらえたものですね。やはりスポンサーがデカいから無茶も出来ませんでしょうね(´・ω・`)
性行為自体はそれほど生々しく描写はされないのだけれど、性の哲学と後宮の在り方みたいなことは滔々と述べられていて、それがまったくもってフィクションだというのが、本書のもつユニークさでもあります。20代にしてこれほど怪しい(褒めてますよ)作品をよくも投稿したものだし、審査員もよくもこれを選んだものである。決して「新人賞」ではなかったはずのファンタジーノベル大賞が、その後長年にわたって稀有な才能を持つユニークな作家たちのカタパルトとなり得たこと、そういう方向性を持てたことは、この第一回大賞受賞作品のおかげに他ならないことでしょう。
アニメと比べると渾沌のキャラが実に良い。アニメでも渾沌自体はいい味を出すキャラだったけど、原作はそれ以上で、そして怖い。江葉の良さも格別だけれど、江葉の名セリフはアニメオリジナルだったのだなー。セシャーミンもタミューンも、コリューンも角先生もイリューダも、要は皆キャラが濃いのだな、アニメと比べると。