ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ロバート・A・ハインライン「深淵」

短編集「失われた遺産」に収録。一冊の本から部分だけ抜き出して…というのはあんまりやりたくないんですが、最近あんまり時間もないし、気力の低下にいたっては危機的状況で、ちょっと一冊読み通すのは無理っぽいので…

そもそもは大昔に岩崎書店の「SF子ども図書館」シリーズの「超能力部隊」が好きだったのを思い出して、ジュブナイルではないオリジナルはどうなんだろうねと、そういうきっかけで読んだので他の作品はまあその。
ちなみに「超能力部隊」の装丁はこういうものでした。http://blog-imgs-18-origin.fc2.com/c/h/e/cheerdown/SFkodomo04.jpg お、おぅ…(一応、内容には即している)

大体のストーリーは記憶の中にあるジュブナイル版と変わりはなかったけれど、執筆年代(1948年)を反映してかパラノイア一歩手前、みたいなスパイ小説風味でした。人類にとって危険な人物を暗殺して回る超能力者集団の危険性は主人公にも悩ませているところだけれど。大目的を果たすために自爆して果てる自己犠牲、あまり救いもないラストで、とはいえラストシーンを魅力的なものにしているのはヒロインのゲイルのおかげでしょう。これがなかったらまー辛かろうね。

思うにアシモフハインライン・クラークの「御三家」の中では最も男性的と(良くも悪くも)言われるハインラインが、最も魅力的な女性キャラクターを描いているんじゃなかろうか。アシモフの女性キャラって「停滞空間」の女性教師ぐらいしか印象に残ってないし(むしろ男性キャラは魅力的だと思うが)、クラークはあんまり読んでないけど女性キャラにあまり魅力がないだろうことはそのあっ…(察し であるw

そのゲイルが悪の組織の手にかかり、まさに自分が殺される様を「実況中継」しながらそこへ主人公のギリアドが結婚の誓いを被せて 大 爆 発 。というエロスもタナトスも煮詰まりすぎでよくこんなのをジュブナイルにしたもんだなとあらためて思う…。

で、ジュブナイル版を読んだときに子供心にキョーレツな印象を残していたのが、行きずりのウェイトレスが拉致されてギリアドの目の前で拷問にかけられ殺されるというシーンであります。わぁタナトい。ジュブナイル版では挿絵(表紙と同様のイラスト)つきでこれがまた「山岳ベース事件」なみにシュールな感じで、原著ではどうなってるんだとドキドキワクワクしながらページめくったら以外にアッサリしていたのはうーむ、どうなんだろうか。どうもね、端折ってるんじゃないかなと思うんだけどねえ。

ちなみに「超能力部隊」は装丁を変えていまでも現役である。アニメタッチのイラストでウェイトレス拷問シーンが描かれているのかどうかは、チョット興味がある(w

超能力部隊 (冒険ファンタジー名作選 14)

超能力部隊 (冒険ファンタジー名作選 14)