ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

伊藤典夫・編訳「吸血鬼は夜恋をする」

当初タイトルからホラーSFの作品集かと思ったけれど実際には副題にもあるように「SF&ファンタジィ・ショートショート傑作選」であり、またSFとかファンタジィが今ほどはっきりとジャンル・プロパー化する以前の時代の作品群でもある。だからいま読んだこの話はSFなのかファンタジィなのかどっちなんだろうとか、別に悩んだり考えたりする必要も無くて、SFでありファンタジィでもあるんだろうなあ。原型は1975年に文化出版局から発刊された同名のアンソロジーで、今回の文庫化にあたってSFマガジンや奇想天外誌に訳出した作品を追加したとの由。訳者あとがきにも

ぼく自身、この頃までのSFとファンタジィにもっとも愛着がある。(略)このおもしろさが、半世紀を経て、新しい読者に共有してもらえることを願っている。

とあるように、こういう時代の作品が持つどこか素朴な善良さ(に、限らないバッドエンドもあるんだけれど)というかなんだろうなあ、良いんだけれどやっぱり昔のものだなとも、思うところでいささか複雑な読後感ではあります。タミヤの古いII号戦車は良いプラモデルだけれど、やっぱりあれは昔のものでしょう?そういう感覚、かな…