ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ダシール・ハメット「影なき男」

これは本当に読んでなかった一冊。読んでみるもんですね、ハメットがこんな作品書いていたとは知らなかった。主人公は探偵ではなく、結婚した妻の実家が太すぎて既に引退し実業家になってる「元探偵」で、クリスマスシーズンのニューヨークに妻と二人で遊びに来たら、昔なじみの知り合い(の娘)と出会ったことをきっかけに事件に巻き込まれ…るんだけど、なかなか渦中には立ち入らない。なるべく距離を取るようで関係者が次々に現れ事件解決に取り組むようなことを願われても、いまひとつ乗り切らない。その割には「ツジツマが合わない」として安易な解決にも飛びつかないで、それでなにをするかというと

 

ずっと酒飲んでるの(´・ω・`)

 

いわゆるアル中酒浸りではなくて、奥さんと二人で朝から飲んだりパーティーに赴いたりもぐり酒屋に入り込んだりで

 

ずっと楽しく酒飲んでるの(´・ω・`)

 

あまりにもアッパーでハッピーで陽キャなおしどり夫婦ぶりで「影なき男」ってまさか主人公のことじゃあるまいかと…まあ、さすがにそれはなかったが。訳者あとがきにも

いううまでもなく『影なき男』はハードボイルドではない。ひとことでいえば小粋な都会小説風殺人喜劇である。

なんて書かれているように、楽しくページを捲っていれば、それでいいんだろうな。ハメットの他の作品と違って初出が女性向け高級小説雑誌で、映画は大人気でシリーズものになったそうです。へぇー。

まあ人好きのするキャラだしわからんでもないか。

 

でもやっぱりまあ、所々で発せられる「ツジツマが合わない」というセリフ、納得のいかないことには納得しないというのはやはりハードボイルドかなと思ったりです。「納得がいけば真実でなくともよい」というのは、米澤穂信が偶にやっているなあ。