「奇妙な味」作品を12本収めたオリジナル・アンソロジー。中村融の編集によるもので「街角の書店」*1に続くシリーズというか姉妹巻。編者あとがきに
誤解がないように書いておくが、江戸川乱歩の造語である<奇妙な味>は作品の傾向を示す言葉であって、ジャンルを表す用語ではない。(略)以来<奇妙な味>は増殖を続けたが、ジャンルを超越してさまざまな場に存在する「傾向」である点には変わりはない。
とある。なるほどなあと思う一方で、ハードSFやハイファンタジーにはあまり見られないだろうし、比較的現代社会と地続きなまま、わずかな一歩を踏み外して…という作品が多いような気はする。
本書では冒頭のクリストファー・ファウラー「麻酔」と巻末の表題作「夜の夢見の川」が異常に濃い。偽物の歯医者に怪しげな治療を施される前者は固定カメラのまま進むドラマや、あるいは同じ構図のまま描かれるマンガとかビジュアル方面にアレンジすると面白いだろうなあ。しかしオチがグロすぎるかもしれない。後者は「闇がつむぐあまたの影」のカール・エドワルド・ワグナーで、チェンバーズの「黄衣の王」に範を取ったオマージュ作品。脱獄囚(女囚)が迷い込んだ女主人とメイドの暮らす館での奇妙な共同生活が急にエロくなるところが(///)。混濁と混乱のまま物語は急展開し、そしてぞくりと寒気だつようなラスト。よいねえ。その他ロバート・エイクマン「剣」とかG・K・チェスタトン「怒りの歩道――悪夢」とか、とにもかくにもその、
奇妙である。