ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

栗本薫「ゲルニカ1984年」

ゲルニカ1984年 (ハヤカワ文庫JA)

ゲルニカ1984年 (ハヤカワ文庫JA)

そんなこんなで結局図書館にあったんで再読。ちなみに初読当時オーウェルより先にこっちの方を読んでたことはヒミツだw個人的には「エーリアン殺人事件」と並んで栗本薫の二大傑作だと思う(異論は認める)。内容はというと――


ごく普通の幸せな家庭生活を送っている平凡な男がゲルニカの話を知ったことから(もうじき戦争が始まるんじゃないか)とか(我々が知らないだけでとっくの昔に戦争は始まっているのではないか)的なノイローゼに悩まされているうちに「そんなのあたりまえジャン!」的なキチガイ電波少女に出会ってふたりしてやれ敵だスパイだあいつらだと被害妄想を逞しくさせ生活は崩壊し人生は投げ捨てられ軍事マニアにナイフ突き刺して逃げ回ってるうちに車に轢かれて死ぬ。

だいたいこんな感じですね。


うひゃあ


なんで10代の俺はこんな話がそんなに楽しかったんだろう?

それはね、30代の俺が今読んでも充分楽しめるほど面白いからさ。


本文にも度々出てくる村上龍の「海の向こうで戦争が始まる」に触発されて執筆したようで、そっちは今でも未読なのだけれど、後年劇場版「機動警察パトレイバー2」を見たときの一助に多分なったんだな「ゲルニカ1984年」は。

登場人物が重度の神経症患者だからってことを差し引いても史実・軍事関連の誤認や誤解は甚だしいものがあるんだけれども、感情的な、いささかヒステリックな、イメージ過多でやる反戦思想の、その稚拙さを愛でて止まない。

あくまで、フィクションとしては、だ。実際にこんな人がいたらドン引きして逃げるお。

私はかって、デビューすぐの年の夏、アンケートを求められ、戦後生まれにとっての第二次世界大戦とは、という問いに答えて、大新聞の紙上で、私たちには私たちの戦争がある――交通戦争や、受験戦争や、という意味のことを云ったので、失笑をかい、かつ攻撃の的にされたことがあった。


あとがきより。さもありなんといったところか。そういうふうに書いちゃう気持ちもわかるし、それに失笑し攻撃の的にしちゃう気持ちもわかるんだよなーうーん。多分この本は「もう世の中全然ダメなんじゃないかな」って気分に戯れることが出来た時代の産物なんだな。現在はもう、それどころじゃネーヨ。


――しかし、どうしてこう、いつの時代も、ぼくたちは、被害者意識だけで動いてるんだろうな。