- 作者: フィリップ・K・ディック,カート・ヴォネガット・ジュニア,他,大森望,宮尾和孝,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/11/25
- メディア: 文庫
- クリック: 235回
- この商品を含むブログ (37件) を見る
アンソロジーの組み方にもいろいろありますが、「翻訳者」を主軸に据えた一風変わった本。2010年に逝去された翻訳家浅倉久志氏の長年に渡るSF翻訳の業績の中から、選りすぐりの九編をまとめた内容。結果的に1950年代のさまざまなアイデアに溢れた良質*1の英米短編SFからなる「SFのチュートリアル」みたいな本になっている。
2、3を除いてほとんどの収録作品が初読、実に楽しく読めました。表題作品「きょうも上天気」は80年代に映画「ミステリーゾーン」の一本として視、またその映画のノベライズ作品を読んだ覚えもあるけれど原典はもっとスケールが大きく、もっと怖い内容だったんだなー。ロバート・シェクリィの「ひる」は解説で書かれているようにこりゃ確かにウルトラQの「バルンガ」そのもので、初期の円谷プロの映像作品のスタイリッシュ具合は海外SFをネタ元にしてた影響もあるのかな?東宝映画の「マタンゴ」もそうでしたね。
カート・ヴォネガット・ジュニアの「明日も明日もその明日も」で描かれるブラックユーモア化した超高齢社会などはこれからの時代にますます読まれていいような。良いSFはひとの想像力を刺激しものの考え方、捉え方を豊かにしてくれますね。そんな作品を(ほぼ、個人的に)見出して紹介してくれたのだからこの時代の翻訳者の方々にはいくら感謝しても足りない気分。文化をプロデュースするって偉業ですわあ…
これからはじめてSFを読むって方には強力にお勧めしたい一冊です。
そして改めて感じるのは「ドラえもん」の偉大さである。あれこそまさに(SF的な観点に限らず)様々な思考・表現方法のチュートリアルだと言えるでしょう。