ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

大森望 編「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

時間SF傑作選、ということで中村融編集の「時の娘」*1が「ロマンティック時間SF傑作選」だったのとは対照的に――というより「時の娘」が出ちゃうんで編集方針を変えたらしいんだがw――いろいろ扱ってます。「時間ロマンス篇」「奇想篇」「時間ループ篇」そして表題作「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」という構成。F.M.バズビィによる非常に印象的なタイトルのこの作品、相当以前におそらく新潮文庫の「タイム・トラベラー」asin:4102236015で読んでる…ハズである。うろ覚えなのは傑作だと聞いて実際に読んでみたらチンプンカンプン(死語)だったよーな印象をかすかに覚えていて、しかしほとんどの内容を忘れて再読してみるとこれが面白いのよ。思うになぜそうなったかと言えば…


俺が年取ったからだよ!老けたよ!!


ってことなんだろうなぁ…一方向へのタイムトラベルなら、誰にでも出来る訳でね。やはり「タイム・トラベラー」にも採録されてたソムトウ・スチャリトクル*2「しばし天の祝福より遠ざかり…」、これに関してはホントに何にも覚えてない、をいま読むとああ、これはゼーガだ。無限に繰り返される生命を脱して有限の死に向かうとか、もうね、セレブラントじゃありませんかね?


イアン・ワトスン&ロベルト・クアリア「彼らの生涯の最愛の時」はこれまで読んできたありとあらゆるタイムトラベル小説の中でも、最もヒドい方法で時間旅行する小説としてこの先永遠に記録されると思われますww マクドナルドならぬ「マックドナルド」でチーズバーガーってオイ。イアン・ワトスンは本書でただひとり二作が採録されていてもう一本「夕方、はやく」の方も相当イカレてる(褒めてます)このひと絶対頭がおかしいよな(褒めてますよ?)誰か BeLoved シリーズ訳してください、きっと売れると思います(まあ、一冊ぐらいは確実に)

そんな目眩く傑作群のなかでもとりわけ良いなあと思ったのは巻頭の一篇、恥ずかしながらこれが初読のテッド・チャン「商人と錬金術師の門」。アラビアン・ナイトのスタイルで語られるタイムトラベル作品は果たしてサイエンスと言えるのか?そもそもタイムトラベルってサイエンスなのか??そんなことを思いながら読み進めていても最後に落着する地点は実に実に味わい深い。タイムトラベルを主題に扱えばこんなに面白い物語を作れますよってお手本のようで、藤子不二雄が「ドラえもん」、手塚治虫が「火の鳥」でやってた構成の妙を味わうような、そんな作品でした。


思うに「タイム」がそれ自体でサイエンスなんでしょうね。今日の新聞になんか記事があったな、ワームホールがらみの何かだったか…

*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20101104#p1

*2:どーでもえーすがずっと「すちゃとりくる」だと思ってました、てへ。