ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

A・ブラックウッド他 平井呈一訳「怪奇小説傑作集1」

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)

以前に「怪奇小説傑作集1」というタイトルの本を確かに読んだ記録があって、再読のつもりでよんだらほとんど初見のような印象。アーサー・マッケンの「パンの大神」は確かに読んでるはずなのだが…と一種不可思議な気分で読み終え、新版に併せて寄せられた紀田順一郎の解説にはたと膝を打つ。俺が読んだのって江戸川乱歩編じゃなかったかしら…と、調べてみると中身はそんなに変って無いらしいので、やっぱり単に印象に残ってなかっただけですか。人の記憶もホラーでスーパーナチュラルですね(´・ω・`)

今回面白かったのは「パンの大神」冒頭、気の毒な少女メリーが脳外科手術を受けてる場面が何故か楳図かずおの絵柄で脳内再生されました。別に以後の展開にはそんなことはなかったのであるが(笑)いろんな視点、いろんな場面に飛んで全体像がなかなか見えない展開だけど、結末に描き出される構図はなんだろう「歪んだ処女受胎」のようなもので、初出時に相当忌み嫌われたってのはキリスト教文化圏なら納得。

W・F・ハーヴィー「炎天」も本書随一の小品ながら全体に漂う得体の知れない薄気味悪さとラスト一行の恐怖感はぎりぎりギャグと紙一重です。そりゃ人間暑さも過ぎるといろいろいたしちゃうわけです。アルジャーノン・ブラックウッド「秘書奇譚」のオチもつい笑ってしまうような種類のものだけれど、この作品のキモである「真空」の正体ってこれカリ城?一見すると上品な紳士しかし生肉をガツガツ食らうガーヴィー氏の二面性は伯爵のようで不気味な下男もなんだかジョドーのように思えてくるわでいろいろ楽しめる。M・R・ジェイムズ「ポインター氏の日録」はテキスタイル・ホラーとでも呼ぶべき、パターンの中から怪奇が再生されるところが面白い(そしてやっぱり本筋に関係しない人物の描写が適当すぎるw)

いやぁ、読んでみるもんですね。面白かったーよ!