ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジョージ・R・R・マーティン「タフの方舟 2 天の果実」

原著は一冊本だったのを2分冊した後半部分。環境エンジニアリング兵団の遺産「方舟」号とそこで精製される数々のクローン生物によって、まるで神のごとき実力を行使する宇宙商人タフが、シリーズ後半では強引というか乱暴というか、ホントにカミサマみたいに振る舞って――且つ、モラリスティックに――どうにも鼻白む展開が散見される。けれども訳者あとがきを読んでみれば時系列的には後期に属するそれらの作品の方が執筆順は早くて、シリーズを書き続けるうちに内容が深まっていったようで却って満足。

そして執筆順では最後に連続して書かれた惑星ス=ウスラムをめぐる人口過剰と食糧生産を主題に据えた3部作が、順番的には距離感を持って読めるのは良い構成ですね。

まるで神のごとき力を、モラルに従って、極めて人間的に行使する最終作「天の果実」最後の一行が泣かせる。こういう締め方は大好きだなー。