ベヒモス―クラーケンと潜水艦 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 作者: スコットウエスターフェルド,Scott Westerfeld,小林美幸
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2012/06
- メディア: 単行本
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<ダーウィニスト><クランカー>両陣営によるスチームパンク第一次世界大戦の時代を巡る冒険活劇第二弾。若干看板に偽りありかな―と思うのは「ベヒモス」こそ漸くクライマックスに登場しドイツ帝国海軍装甲艦ゲーベンを一撃で沈めるほどの活躍を魅せるけれど「クラーケン」は多少会話で触れられるだけ、潜水艦に至ってはまったく出て来ない。サブタイトルは編集部で付けたものだと巻末に断り書きがあり、訳者あとがきでも苦言を呈していて、その点で少し興を削がれた気分。
むしろ主な舞台は海では無く街中で、飛行鯨「リヴァイアサン」を脱出したアレック公子といろんな面で彼を助けるディランことデリン・シャープの戦時下コンスタンチノープル(イスタンブール)に於けるシティ・アドベンチャーのようなものか。この世界ではオスマン・トルコ帝国は技術的にはクランカーの機械工学を導入しつつ精神的にはダーウィニストに依るところもあるような、生物を模した形の乗用機械を多用している。人型蒸気ウォーカーが巨大なテスラ・キャノン(!)を攻撃するシーンはなかなか胸熱。
相変わらずぽややん過ぎるアレック公子と気をまわし過ぎるデリンのギャップだらけの行動はあいかわらずで面白いな。
アレック:ぼく最近、恋をしちゃったみたいなんだ。どうしよう (*´Д`)
ディラン:へー (もしかしておれ、いやわたしのこと?女の子だってバレちゃった!?(゚Д゚≡゚Д゚)デリン :で、相手って誰よ。 (どきどきどきどきどきどきどきどき( >Д<;)
アレック:クジラ最高だよね\(^o^)/
ディラン:(#^ω^)ビキビキ
どうせならこのオルタネィティブな世界でのヴェルダンやソンムの戦いを見たかった気もするけれど、それをやらずに清く正しい少年少女冒険ものを指向するのは、たぶん正しい判断でしょう。次回はいよいよ日本が舞台、日英同盟下のダーウィニスト国家としてどのように描かれるのかちょっと楽しみです。
前巻同様挿絵も素敵でバーロウ博士の運ぶ謎の卵からは新種の人造獣「才知ロリス」が孵化するのだけれど、物語的にはまだ端役か。次巻でどう纏めるんだろうね?