
- 作者: 東郷隆
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/07
- メディア: 単行本
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鎧兜をテーマにした連作短篇集。時代小説で道具立てといえばまずこれ刀だと思われるが、防具を据えるのは珍しい…いや、時代小説ってそれほど読んでないんで偉そうなことは言えませんけど(汗)。著者は以前から鉄砲をテーマにした「本朝銃士伝」*1などユニークな作品を輩出している人ではあり。冒頭の一本、上杉謙信が織田信長配下の賤者によって呪殺される「しぼ革」がかなり伝奇的な作品だったので「奇談」ってそういう話ばっかりなのか…?と少々危惧を覚えたけれど、他は至って手堅い内容です。
収録作の中では「角栄螺」が最も良かった。読んでいて気持ちの良い展開、だけどこの話の面白さにあんまり甲冑は関係ないような気がするのは…まあいいか。最後は長州征伐の先鋒に出向いた井伊の赤備えが近代兵器に完敗する「金時よろい」で幕を閉じる。明治の世になり不要となった甲冑が外国人向けに売り払われる光景で終わってしまうのは如何にも正道で、さすがに昭和19年サイパン島とかにはならない。その点いささか食い足りない気がしなくもない。昭和3年済南事件とか、ダメかな…*2
*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20071028
*2:Webサイト「兵器生活」内コンテンツ「消えた甲冑将校」参照http://www.warbirds.jp/heiki/kanamaru2.htm