ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

マイク・ダン「サイドワインダー」

サイドワインダー (創元ノヴェルズ)

サイドワインダー (創元ノヴェルズ)

友達とF-14トムキャットの話をしていて、そーいや昔イラン空軍のトムキャットが出てくる話を読んだよなあと、うろ覚えの記憶を元に検索して出て来たタイトル。しかし実際に手にとってみたら未読の内容でした。どうも昔読んだのは「第45戦闘航空団」の冒頭シーンを記憶していたのではないか…と、思われるが定かではない。

東京創元社が「創元ノヴェルズ」レーベルで盛んに出していた軍事作品。第三次世界大戦とはいわないまでも、ホルムズ海峡を舞台にアメリカとイランが戦闘行為を行う展開は「シミュレーション小説」的ではあるけれど、実際のところシミュレーション小説って「シチュエーション小説」だったよなぁというのがまあ、今更ながらに。F-14vsF-14という異色の対決を行うために、イラン革命防衛隊は深い考えも無く(ように見える)オマーンを攻撃し、例によってクソみたいなROE(交戦規定)が例によって主人公の足枷となるのであった。

翻訳出版は1994年、原書刊行は1991年とポスト冷戦時代の作品だけれど、フセインのフの字も出てこないあたり、まだイラクがアメリカの友好国だった最後の時期の作品なのかな?現代の米海軍と違って艦上機にはF-14以外にもA-6やA-7、おまけに途中でA-3スカイウォーリアなんてものまで配属されてきて*1、それは賑やかで楽しい。オマーン空軍に配備されている対地攻撃機は英空軍のパイロットが出向で(本文じゃ傭兵って言ってるけど)飛ばしているホーカー・ハンターだ。みょうにこう、クラシカルというかベテランというか。考えてみればF-14だってこの頃は相当のベテランだものなぁ。

タイトルから解るとおりにフェニックス・ミサイルは使用されないんだけれど最後はガンキルだった。そのへんもまーお約束みたいなもんでしょー。現代の空中戦は一瞬でカタがついてしまうので、お話の大部分はそれまでの経過を追っていくのだけれど、スービック基地(まだ存在してた)からペルシャ湾までの航海中に事故が起きたり事故が起きたり水兵が自殺しかけたりと、原子力空母の日常生活は無駄にサスペンスフルである。この手の航空小説によくある「無意味なベッドシーン」が控えめだったのは良し。

*1:電子偵察型なのでEA-3Bでしょうか