ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジャック・ヴァンス「天界の眼 切れ者キューゲルの冒険」

ジャック・ヴァンスの「切れ者キューゲル」シリーズは、前に「不死鳥の剣」でひとつ読んでいた*1けれど、その短編「天界」とそこから始まる連作を、同じく中村融訳によってようやく一冊にまとめられたもの。いや長かったね。はじめて「切れ者キューゲル」の名を聞いたのは多分「トンネルズ&トロールズ」のルールブックが出た頃じゃないかと思うのだけれど、「不死鳥の剣」で初めて読んだキューゲルは、これってほんとに切れ者なのかなーと苦笑交じりな疑問符のつく人でしたが、今回やっとわかりました。この人切れ者じゃなくて「切れ者(自称)」です。しばしば「切れ者キューゲルの名は伊達じゃないぞ」などとひとりごちますが、伊達です。むしろ詐欺ハッタリの類いに近いしもうちょっと言ってしまうとこの人は、

なんだ、ただの人間のクズか

という程度の小悪党というかモブ外道みたいな感じだった…

ピカレスクロマンというにはあまりにカッコ悪い(巻末の訳者あとがきには「ピカレスクロマンとは悪役が格好良い話ではない」との解説があるが)し、特に女性キャラクターに対する態度がその、お互いの同意のない一方的な性交で事後も放り出して特に面倒を見ない(表紙にも描かれたダーヴェ公女の末路とか酷すぎにも程がある)ようなのが続出で、正直読み進めるのが辛かった。石黒正数の表紙画がなければ難しかったかも知れないなあ…などと思いながら終盤に差し掛かると、あっと驚く

大 ド ン デ ン 返 し !!

で捧腹絶倒まさかの爽快感炸裂エンドなのであった。

結論:ジャック・ヴァンスはいいぞ