ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

カート・ヴォネガット「カート・ヴォネガット全短篇 2 バーンハウス効果に関する報告書」

 

 全四冊中第2巻。刊行からしばらく空いたのはぶっちゃけ 忘 れ て い た からなんだけど、収録作のほとんどが既読であるにもかかわらず初読のように読めるのは、これはやっぱり忘れてたからなんだろうなー。モンキーハウスやバゴンボ読んだのずいぶん前だし、最近読んだ2冊はあんま印象残ってなかったしな。今巻では第一巻より承前する「セクション2 女」の他「セクション3 科学」「セクション4 ロマンス」に分類される作品が掲載されています。ロマンスの項目は次巻に続くようで、章の冒頭で解題されるいくつかの作品がこの本では読めないというその、どうなんですかこれ?ということになっていますハイ。いや全部読めばいいんでしょうけどね。

忘れてばかりとはいえそれでもいくつか印象に残ってるものはあって、とりわけ記憶に刻まれていたのは「永遠への長い道」で、うん、まあ、これ、ベタです。ベタベタです。なにか匂って来そうなほどです。愛、そしてモラル。そういうものが壊れていく社会を見続けるのは辛いだろうなあ。なんてことを考える。

お話としては女もロマンスも古臭い(「更新世から掘り出して来たような人物像だ」と評されたりする)なか、「科学」に属する話はいまでも普通に面白いのがいくつかありますが、しかしお話自体はあんまり科学的ではありません。それもまあ、いつものことですそういうものだ。

でもこの古臭さが、今後十年二十年と時を経て行くうちに、古典になっていくんじゃないかなとも思うんだよな。

 

余談。今回一番面白かったのは、小川哲による巻末の解説。

「スパイダーマン:スパイダーバース」見て来ました

公式…にはなぜかつながらんぞまあいいか。ともかく、おもしろかった!そんなにスパイダーマン詳しい訳じゃないけれど、そういうこととは無関係に普通に楽しい、普通にヒーロー、普通にビルドゥングスロマン

マルチバースから様々なスパイダーマンが集うところは実質映画プリキュアなので、劇場側もミラクルライトを配るべき。

 

以下隠しますよいちおう。

 

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ハンス・ヘルムート・キルスト「将軍たちの夜」

 

将軍たちの夜 (角川文庫)

将軍たちの夜 (角川文庫)

 

 安彦良和が三号突撃砲B型を描いていたとは知らなかった。いやA型かもしれないけどさ、ここはB型ということでひとつ。

ナチスドイツと殺人事件を主題にした、ある意味古典的な推理小説で、結構前に映画化もされている。内容は知らなかったが戦車が出てくることで好事家には知られているように思う。

以下、ストーリーの中核に関わるネタバレがあります

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川村拓「事情を知らない転校生がグイグイくる。」②

 

 

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クリスティアン・ウィルマー「鉄道と戦争の世界史」

 

鉄道と戦争の世界史

鉄道と戦争の世界史

 

 19世紀から20世紀にかけてのおおよそ100年間の様々な戦役で、鉄道がどのような役割を果たしていたかを編年的につづった1冊。鉄道というのは近代文明社会の大動脈であるからして、近代文明社会が激突すれば動脈のように重要な働きを示すものです。このテーマで1冊まとめたものってなかなか無いよな(もちろん個別の戦闘や運用、装甲列車写真集みたいなものはありますが、歴史概説書というのは貴重だ)。とはいえ近代戦で鉄道が果たした大きな役割は兵站と補給で、この分野ではマーチン・ファン・クレフェルトの「補給線」が名高すぎる存在であって、本書でもかなり参考・引用されています。

こと趣味的な話で言うと鉄道趣味では軍事分野はかなり傍流で、軍事趣味でも鉄道というのはまあメインストリームではないでしょう。でも軍事と鉄道というのは人類の歴史の中で強力に連結されていた時代があって、それぞれの時代と戦役で軍事がどう鉄道を利用したか、鉄道が軍事にどんな影響を与えたか、そのあたりは自分がまったく不勉強なもので結構な知見を得られたように思います。鉄道の軍事利用が最高潮に達したのは第一次世界大戦の時期なのだけれど、その後の第二次世界大戦においては既に旧式なシステム(なにしろメインは石炭で動かされる蒸気機関だ)であったために活用された、主力兵器と燃料を奪い合うことが無かったというのは、なるほど言われると納得する。

19世紀の帝国の時代にあっては鉄道線路を敷設することが既にひとつの軍事戦略であって、その辺は現代の日本の平和な鉄道利用者には驚くべきことなのかも知れません。

というわけで「シンカリオン」好きは物は試しに読んでみたらどうであろうか(笑)

伊能高史「ガールズ&パンツァー劇場版 Variante」4巻

 

ガールズ&パンツァー 劇場版Variante 4 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

ガールズ&パンツァー 劇場版Variante 4 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

 

 表紙エリみほってあざとすぎませんかね?いいぞもっとやれ、な4巻。誰しも事情はある、をホントにいろんなキャラにやってて遂に今巻では審判3人や大洗モブ生徒にまでスポットを当てる。そういう「本編で描かれなかったこと」をやる一方で、ではどこを残すのか。「本編で描いたこと」をもう一度描いているのはどんな場面なのか、その辺を気にしながら読んでみるとまた、面白いもので。

それでやっぱり本編では若干瑕疵が残ってたところを埋めているのは、やっぱりいいよなーと思う訳です。エルヴィン・グデーリアンのコンビとプラウダの小っちゃい子たちとかね。77ページ1コマ目のルクリリさんかっけえ(関係ない)

 

しかしクーゲルパンツァーってあざとすぎませんかね?いいぞもっとやれ。