銀河のさすらいびと (ハヤカワ名作セレクション ハヤカワ文庫SF)
- 作者: キース・ローマー,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/08/09
- メディア: 文庫
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ハヤカワ名作セレクションの一冊として最近復刻されたもの。とはいえ初読なんで特に懐かしさとかはない。そういう感覚抜きで読んでみたら・・・
古い話だった(笑)
「恥も外聞もないスペースオペラ」と訳者が書いているように、ある種の王道?疑いを持ったら楽しめないような空想宇宙小説。
大学中退無職空腹の主人公ビリィ・デンジャー君がひょんなことからハイソサエティーでセレブリティな異星人の宇宙船に雑役奴隷として拾われ、コキ使われてる間にひょんな事故から主人を失い、末期の言葉に従って唯一生き残ったレア姫を守ると誓う*1、ところがドッコイ突如現れた悪の宇宙人に哀れ姫は拐かされ、九死に一生を得たビリィ君は猫一匹道連れに銀河をさすらいかくかくしかじか、
めでたしめでたし。
・・・というのがおおよその筋立て。ストーリーの展開は異常なまでに早く*2、まるでジェットコースターに乗せられているようである。いやローラーコースターか。難点としては活劇部分が非常に地味だ、ということが挙げられよう。もすこし派手でもバチは当たらないような。なにせ最後の敵とはフェンシングで決闘だ。重力サーベルでもライトセーバーでもなく普通に剣、普通に庭先。
そして一番重要なことだが、レア姫があんまり書き込まれてない*3のでいまひとつ魅力に欠ける。登場人物全般書き込みは少なくて、猫のユリーカとか植物異星人のフシャ=フシャとか、ブレイクする一線の前で踏みとどまってるようなもどかしさを感じる。が、ただ一人、主人公の奴隷となる、悪の宇宙人種族のスラットは魅力的である。少ない登場場面で、実に印象に残る。
ある惑星で主人公が奴隷に身をやつし、海老取り漁船で強制労働してるのも実に実に印象的。こっちはSFなので海老ではないし漁船でもない*4。肉体労働を続ける内に、気がついたらムキムキの無敵超人になってたり、スクラップ置き場でみょうにロマン溢れる爺さんから最高の宇宙船を手に入れたりと実に恥も外聞もない(笑)
だが現在のSFには見いだし難い、ある種の「おおらかさ」は読んでいて楽しいものである。
すさまじいエネルギーの奔流に乗って時空連続体を切り裂きながら、光速の十倍、百倍、千倍の加速で内へ内へとひた走る旅であっても、二千光年というのは相当の距離だ
昨今なかなか、こんな文章が書けるものでもあるまい。
夢と冒険、ロマンとスリルに満ちたラブストーリーであるが、ビリィ君やたらといろんなところで働いてお金稼いでる。先立つものがなければ冒険もロマンもあったもんじゃないんである。
「トラベラー」が好きだった人にはお勧めであるが、「トラベラー」が好きだなんてひとはみんなもう読んでるんだろうな。