ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジェフリー・ディーヴァー「クリスマス・プレゼント」

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

実に新年らしからぬ一冊であるがミステリー・チャンネル1月のオススメ本である(笑)この作家の本を読むのは初めてなのだけれども、なんでも「どんでん返し職人」なのだそうで成る程全編にわたってバタバタひっくり返っている。同じパターンが続けられる短編集はある意味両刃の剣で読んでいく内に飽きてくるものもいくつかある。具体例を出すと語弊があるので避けるが*1
逆に、それを前提として自分がどういう毛色の作品を好むか、という観点で読み進めてみた。

短編小説は、たとえるなら、狙撃手の放った銃弾だ。速くてショッキングなものだ。そこでは、善を悪として、悪をさらなる悪として、そして何より痛快なことには、究極の善を究極の悪として描くことさえできる。

と、ディーヴァーはまえがきで述べる。それを裏付けるかのように作中で「どんでん返」されるのは多くの場合モラルだったりする*2、その上で自分が好んだのはモラルや価値観が守られるような話だった。最も気に入ったのは音楽好きの警官とストラディバリウス強盗事件を描いた「ノクターン」という一品で実に古臭いモラルとカビの生えた思想で出来上がっている。

しかし、この宇宙ではまだ有効なのだ。

思うにモラルという物はどれも古い。対してインモラルなものは日々新しく生み出されている。寒い時代だとは思わないかね?

*1:邪馬台国−」と「−とんかつ」が代表だ

*2:いわゆるクライム・ノベルだからなのか、殺し屋やストーカーが空気のように自然に出てくるのはアメリカの病だろうか