- 作者: 小沼丹,庄野潤三
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2002/02/22
- メディア: 単行本
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本来「随筆集」ではありますが。
エッセイを書くのがエッセイストなのではなく、エッセイストの書いたものがエッセイなので、先に在るのは人である。ってなことをどこで読んだかよく覚えているのだが、それなりに物議を醸し出さなくもない言質なので明言はしない。この本を手に取ったのも「黒いハンカチ」asin:4488444016の作者として知ってたからで、あらかじめエッセイストを知っていなければエッセイには手を出さないだろうという、まあ好例ですか。「見知らぬエッセイスト」の文章にはなかなか手が出ないもので。世の中には「聞いたことも無いバンドのベストアルバム」を見るのが面白いって人もいるけどな。
内容は色々です。大体からして随筆なんていろんな事を書くものです。一編だけ取り出せば高校あたりの現国教科書に載せられて作者の心情を選択せよ的文章になるかも知れないがまとめて読めば(良くも悪くも)年寄りの繰り言である。酔って気持ちが良くなると何でもかんでも家に持って帰るのはヤメレw
どうもこの人、かなりの近所に住居していたようで知った地名がバンバン出てくるのはそれなりに驚いた。戦中戦後、いずれ縁のない時代の出来事ではあるけれど、地縁というのはあるもので急に親しみを覚える。
内容よりは文章を楽しむ一冊とでも言えばよいか。文章を楽しむとはどういうことか、多くは「文体」に依るのだろうけれど、いささか古めかしい言葉づかいや醸出されるユーモア、割とブツ切れな末尾など、楽しいのは雰囲気かな。
思うにこの人は「文士」なのでしょうか。「儒者」とならんで戦後の日本社会では生まれてこない人種ですね。それはすなわち政治と社会の距離感が縮まった事の証でもあるのでしょうけれど。