- 作者: ジェフ・ライス,尾之上浩司,真崎義博
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/08/23
- メディア: 文庫
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「事件記者コルチャック」は1970年代にアメリカで製作された怪奇ミステリー系のTVドラマで、作品としては短命に終わりながらもカルトムービー的な人気は後代の様々な人や作品に影響している…と、漠然と知識だけはあったけれど残念ながら直接視聴の機会を得ることはなかったのでした。だから大学のゲームサークル入って初めてやったクトルゥフのセッション、たしかゾンビネタだったそのときにゾンビっていやーアレだよなーうーんと思わず
「ゾンビなら口に塩詰めて縫ってしまえばええやないですか」
そんな振りをしましたらですね、
「それは事件記者コルチャックだ!」
などと先輩に(確かキーパーやってたひとだな)即座に切り返されて、更に
「お前なかなか詳しいやつだな」
てなことを言われたんだけど内心では、
(´・ω・`).。oO(実はアップルシードで知ったネタなんですって言えねーよなぁ…)
いやはや、本当にあったこわい話です。一度も見たことないのに長年妙にこころにトゲが刺さっている、そういう存在でした(わらい
そのコルチャックに「原作」があると知ってまー驚きましたね。興味津々読んでみましたよ。「ラスベガスの吸血鬼」「シアトルの絞殺魔」中編二本から成る構成。前者は確かに原だけど厳密に言えば後者はノベライズ。成立過程や舞台としている都市こそ違え話の展開はほぼ同一で、50がらみ、アルコール中毒寸前、毒舌家で決して人好きするタイプではない新聞記者(2流の事件記者)のコルチャックが街で起きた奇妙な連続殺人を取材していくうちに超自然的な側面に突き当たり、新聞社の上司や警察の無理解を越えて真相を突き止め解決するも、事件その物は隠蔽され本人も街を追われていく…だいたいそんな流れだ。
ある種の「ゴースト・ハンター」ものであるけれども少しもヒロイックではない、むしろ泥臭くてハードボイルド風味なキャラは面白いな。一見すると華やかなラスベガスや古都シアトルの、社会の底辺に近いところの視点・生活感が良いねえ。風俗嬢と恋に落ちたりするところもだ。「新聞記者」の立場はあくまで取材する傍観者であって、どれほど事件の渦中にいても主体者にはなれないところ、良くも悪くも便利に使い捨てられるところ、その辺もふくめて苦みばしった中年のオッサンの魅力といえましょうか
二本ともに登場するモンスター(吸血鬼と錬金術師)自体はオーセンティックな怪物で、「ゾンビの正体は口蓋の裏に吸着しているナメクジ状の生物」みたいに科学的合理性に落着するようなもの*1を期待していたのとは若干違いましたが、それでも全体に感じる70年代初頭のアメリカ社会の雰囲気など、収穫の多い一冊でした。巻末解説は2本のTVムービーと短命に終わったシリーズ、原作小説の執筆状況など情報も多いもので。これだけでも十分読み応えありです。
いろいろ紆余曲折がある2本の小説作品、前作でラスベガスを追われたコルチャックが辿り着いたシアトルに、前作のキャラクターが何人か、やっぱり移り住んできている強引な展開はちょっと笑っちゃったんだけれど(笑)後先考えずに主人公を放り出すもんじゃないよなw