ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ダン・ハンプトン「F-16 エース・パイロット戦いの実録」

F‐16―エース・パイロット 戦いの実録

F‐16―エース・パイロット 戦いの実録

F-16戦闘機*1というのも世界的にベストセラーな傑作戦闘機で、ウィキによればアメリカ空軍作戦機の過半数はF-16なのだそうな。とはいえハイローミックスのローの方みたいな印象が強くて考えてみれば具体的な話をあんま読んだことないなーと手に取ってみる。著者は湾岸にもイラク戦争にも現役で参加したパイロットで、普段この手のものってあまり読まないんだけどね。

よーするに映画の「トップガン」みたいなものを想像すればだいたいあってるそんな感じ。二度のイラクでの戦闘のみならず訓練期間の様子やF-16戦闘機が果たす役割とか、かなり興味深い内容であることは確か。著者が配属されたのはF-16飛行隊のなかでもちょっと特殊なワイルド・ウィーズル部隊(対空火器制圧部隊)なので、現代の空中戦の中でも相当にハードな戦闘を行っていて戦闘場面の記述も迫力あるものです。1991年の湾岸戦争*2のときはまだUSAFに最後のF-4G飛行隊があったんだよなと胸が熱くもなったりだ。

小型の単座戦闘機でマルチロールミッションをこなすF-16は、既にパイロットの選抜過程で独立独歩な気質をもつ人間が選ばれるようです。よく言えば自立心旺盛で決断力に富んだ、悪く言えば自己中心的で傲慢な著者の人柄は記述の中にも滲み出ているようで、読んでいて若干辟易するところもあるのが如何にもパイロット気質というところか。やたらとウエメセなのはそりゃ空飛んでるひとだからなあ・・・。UAVオペレーターを(非常にわかりやすく)見下しているんだけれど、ひょっとしたら将来の戦争では本書のような実戦を経験したパイロットによる手記は生まれてこなくなるかも知れませんぜ?や、ワイルドウィーズル機の任務の大変さからは、まだまだ無人化の及ばない機体は多いだろうなとも思わされたのだが。

長い軍歴中から美味しいとこだけピックアップした内容、よくまとまってて読みやすいのはやっぱライターいるんだろうナーなんて思ってたら巻末に「私は本書を自分自身で執筆した」と後書きされていてホントかいな。

ところで翻訳の副題には「エースパイロット」ってあるけど、対地攻撃任務ばかりで空中戦はやんないんだぜ。対地エースって無いわー*3

*1:著者によると本機を「ファイティングファルコン」と呼ぶのは素人だけで他はみな「バイパー」と呼ぶのだそうな。ジェネラルダイナミクス社も無くなって久しいですね。

*2:本文では「第一次湾岸戦争」表記

*3:著者本人はF-15飛行隊のことを「彼らは空中戦しかやらない」みたいにわかりやすく見下しているw