ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

カート・ヴォネガット「死よりも悪い運命」

死よりも悪い運命 (ハヤカワ文庫SF)

死よりも悪い運命 (ハヤカワ文庫SF)

カート・ヴォネガットのエッセイとしては三番目の本で、1980年代の講演などを元手に作られた一冊。運命は死よりも悪いね!

内容は相変わらずである。ブッシュ大統領が散々批判されてるがこれは親父の方で世の中も相変わらずですねと、今になって気づかされる。

面白かったのは西欧文明は戦争中毒ではないって書いてるとこで、成る程確かにそうかもしれない。もし本当に西欧文明が戦争中毒者だったら、F-106戦闘機が実戦配備されてた頃のうちに地球をこんがりベーコンのフライに変えちまってただろうからだ。


ちなみにF-106戦闘機というのは1960年代にアメリカ空軍が配備したいわゆる「センチュリー・シリーズ」と呼ばれる航空機のひとつで愛称を「デルタダート」と言う。この戦闘機はソ連戦略爆撃機(ミサイルに非ず)が北極海を雲霞の如くに越えてくる時に備えて空対空<核>ロケット弾AIR-2「ジーニ」を搭載していた。呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!


ヴォネガットは言う、西欧文明は戦争中毒なのではなく、戦争準備中毒なのだ、と。

これは飲酒よりもギャンブルに似ている。この中毒になった人びとは、自分の体が興奮性伝達物質を血流に放出するような状況をむやみにほしがるようになるからだ。わたしはこう考えずにいられなくなった。悲しいことに、戦争の準備がおもしろくて病みつきになった人びとが、われわれのなかにいる、と。
 戦争が近づいた、その準備をしなくてはならないといいふらすと、この人たちはほんのしばらくだがいい気分になれる。朝食代わりのマティーニを飲んだ酔っぱらいや、スーパーボウルの勝敗に給料小切手の全額を賭けたギャンブラーのように。

ああ、まさしくそういう輩は大勢いるよな!
え、俺? いやだなぁ、俺はまだ中毒なんかじゃあ、ありませにょ?

中高生にタバコや酒やの害悪を教えるには、禁欲的且つ絶対主義的な非喫煙・飲酒である人物に説教されるよりも末期ガン患者を連れてきたほうがよほど効果的だという提議がある。それと同様に中高生に戦争の害悪を教えるには、戦争被害者や平和主義者を連れてくるよりは、末期の戦争準備中毒患者を連れてきたほうが効果的なのかもしれないなあ、などと思う。

「たのむよ、多弾頭再突入弾道弾を二十発と、B-1戦略爆撃機を一編隊を買うだけの金を貸してくれないか。そしたら、誓って二度と迷惑はかけない」

効果はてきめん!

いやだヵら、こっち見んなょ、註どくじゃねーって。