
- 作者: 嶋本達嗣
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/12
- メディア: 単行本
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なんでも今年は日本ファンタジーノベル大賞20周年なんだとかで「小説新潮」の特集*1を見てたら懐かしくなり再読、の第7回優秀作品。
図書館で借りたのだが別刷りの選評が挟み込まれていて感動しました。秀でた図書館と優れた図書館員は生きる世界遺産です。
ファンタジーノベル大賞をリアルタイムで追っかけてたのはこの時までなんで良く憶えてるんですが「バスストップの消息」ってヘンな話なのです。むかし「イスが歩けばファンタジー」だって言葉がありましたが、まさか本当にバス停が歩くファンタジー小説を読んだ時には驚いたものです、そこそこに(そこそこかよ)
選考委員によるとこの年は「コンクール始まって以来の」低調だったそうで、実を言うとこの作品もそんなに完成されているとは、思いません。前年の「鉄塔武蔵野線」が――いまは目出度く文庫になってますがasin:4797342641――矢鱈と面白かった反動もあるんですが、どうもね。再読して良くわかったんですが物語性に比べて詩情が突出し過ぎている上に、各場面が断片的で説明を避けてるような感があり…
良い意味で言いますが全部独りで作った自主制作映画みたいなんで、万人向けじゃありませんね。「イカ天」*2を覚えてる人は多いでしょうが「エビ天」*3を知ってる人は少ないでしょうねー
ああでも、すごく好きなんですよこの作品…
僕らが信じていたのは、伝えようとすること、ではなく『伝わってしまうこと』だったのに。埋まらない思いは、そのままに見つめあっていたかった。その方が、確かだった。あなたが、何者でもないあなたとして隣にいてくれたから。僕は、愛する人を、演台の下をゆく通行人のふりをして見送るしかないのか。窓を閉め忘れた部屋、古い机の上の、ペーパーウェイトみたいに。
バス停は革命には参加しない。けれど、目を伏せることもしない。あなたと、ただ途方に暮れていたいんだ。強い意志をもって無力であり続けたい。汚れた空の下で。行かないで欲しい。
本文を抜き取るだけでなんだかただの中二病患者が妄言吐いてるような気分になりますけど、大好きなんです。
*1:「歴代受賞者の選ぶマイベストファンタジー」が良い意味で無茶苦茶過ぎて楽しい
*2:むかし、そーゆーTV番組があったんです
*3:むかし、そーゆーTV番組があったんです…っていま調べてたら平山夢明ってこれに出てたのかよ!「ペキンパーの男」ってよく覚えてるよ!!「ぺきん・ぱーの男じゃありません、ペキンパーの男です」