- 作者: アダム・スターンバーグ,山中朝晶
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/12/05
- メディア: 文庫
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911事件から14年経つけれど、いかにもポスト911な作品。「汚染爆弾」により荒廃したニューヨークを舞台にした殺し屋小説で、治安の崩壊した社会では金持ちがバーチャルリアリティに接続して現実逃避する一方、低所得者は犯罪とか住宅難とかまあいろいろ格差社会なわけである。職業的暗殺者であるスペードマンの仕事流儀が、基本的にはVRに接続して寝込んでる人間の、文字通り寝首をかき切ることだというのは地味な殺しでちょっと笑ってしまったのだけれど、子供は殺さないことを信条にしていたらターゲットは成人年齢に達したばかりの少女だったとか、依頼人は実の父親で表向きは全米屈指のTV伝道師だが裏ではDVだとか近親相姦だとかまあベタなストーリーだわな。
一部のキャラクターの行動がやけに御都合主義的だったりするきらいはあるけれど、いかにもイマドキのアメリカン・ハードボイルドだなという気はします。イマドキのアメリカで趣味で読書する層ってどんな人たちなんだろうね。
文体は一人称で延々と殺し屋の独白を聞かされる破目になるのだけれど、他人の会話、台詞も地の文に織り込む形式はちょっと面白かった。最近のハヤカワはNVでもSFぽい話が多いように感じるのは果たして気のせいだろうかと、実はそれがいちばん気になってるのだけれど・・・
まあこの話でいちばんビックリするのはオチと最後まで全然触れられないヒロインのボーイフレンドの正体なんですけどね。お前だったのか。