恥ずかしながら自分の読みが浅かったようで、どうもうまいこと楽しめなかった。人類が滅亡した無人の世界で、北極圏の天文台に残った老人と木星探査宇宙船の女性クルーとの交信、のような話だと聞いて手に取ったんだけど、この二人が交錯するのは終盤近くのほぼ数ページだけで、あとは全般的に孤独な人間が過去の過ちをペシミスティックに回想することと、行き場のない現在に漠然とした不安を持ち続けることの連続なのでなんか読んでいて重かったのね。
そしてどうもこの二人が生き別れの親子なのではないか…?と、そういう想像はできるんだけど、明確に答えは出ません。巻末解説にもあるように「読者に解釈が委ねられている部分が多い」作品なので、カタルシスが足りないというかなんというか。もう少し丁寧に読み解いていけばまた違ったのかな。
どうもその、特に理由もなく突然人類が滅ぶ(戦争の噂、なる言葉は出てくる)というのが、閉塞状況を作る「設定のための設定」なのでそこに乗れなかった気はする。
滅ぶというか滅んだらしい、か。それも明確な答えは描かれないので。