まあ怪談…だよな。「きつねのはなし」や「宵山万華鏡」のような、闇森見とでもいうべき路線でこういうのはアニメにならない(笑)数年ぶりに再会したグループが10年前に疾走した仲間のことを思い出しながら、一人一人が自分の体験した奇妙な出来事を語り合う「百物語」風な連作短編集。個々の章を繋いで行くのが連作銅版画(と、その中に描かれた女)というのはちょっと乱歩の「押絵と旅する男」のようであり、M.R.ジェイムズ風でもある。
それぞれの章はまた「旅」をテーマにしていて、異郷を訪れて異界に触れるというのも萩原朔太郎の「猫町」をはじめ怪談(あるいは幻想文学)では、ある意味伝統的な手法です。
個別の章も全体に於いても、綺麗にまとめずにどこか読み手を不安に誘うような締め方はとてもとても良いものです。でも、こういうのはアニメにならないだろうなあ、やっぱりね。