ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

カート・ヴォネガット「カート・ヴォネガット全短篇 3 夢の家」

 

 忘れたころに読んでくシリーズ(笑)今回は「セクション4 ロマンス」の続き5本と「セクション5 働き甲斐VS富と名声」19本の構成。「富と名声」を「働き甲斐」に対峙させちゃうのは正直どうかと思わなくもないけれど、実際そういう話が多い。要は金持ちと貧乏人で、大抵の場合貧乏即ち善である。そう、これは童話なんだなとようやくなにか落ち着いた気分になりました。これまでは「将来の古典」とか「気の抜けたO・ヘンリー」みたいな感触だったけれど、男女関係や労働問題を題材にして<大人向けの>童話を書いたらこんな話になるのかも知れない。感傷も感動もどこか甘くて、決して濃過ぎたり刺激的過ぎたりはしない。長編はむしろ劇薬とか毒薬みたいな話が多い人だけれど、その成分の中核には、こういう甘いものがちゃんとあるから、劇薬も毒薬も薬になるのであろう…

痛いだけではお話にはならんと、それは個人の感想です(ここは個人の感想を書くブログです)。

今回収録作の中では本書初出の「都会」というのがもっとも良かったけれど、それでもやっぱり本編より巻末解説(今回は川上弘美による)が面白かった。その面白いポイントは、実はヴォネガットとはあんま関係ないんだけれどw