新紀元社「幻想と怪奇」シリーズから「街」をテーマにしたショートショートノベル作品集。巻末には第三回ショートショート・コンテスト入選作3本と選評を掲載。
ショートショートという形式も面白いもので、長くは書けないからこその断片的であったりさわりであったり、想像の余地を残すものであったりと、ボリューム的には短くとも余白即ち「アキ」が大きく取られているような作品が多いなと感じました。
「街」というテーマも面白いもので、街は空間であり、街は時間を有し、街には人がいる(いない)。それぞれの書き手が自由な切り口で街を描いても、そこに「傾向」が生まれてくるのはテーマ小説群の面白いところなのでしょうね。
自分の印象に残った作品をいくつか。
・勝山海百合「鱗町ロズウェル」
家(それはかりそめのイエである)の自室から繋がる異空間のような街と、コックリさん的遊戯の中から湧き上がる心霊現象とを、果断に叩きのめしていく姉がすごすぎる。著者も寄稿していた「手のひら怪談」シリーズを彷彿とさせる奇想と天外、そして豪快さがよいなあと。
・小田雅久仁「刹那ヶ丘」
死病を発して壊れてしまった妻と共に訪れた、地図にない街。走馬灯の中を歩むように映し出される思い出の積み重ね。切ない話です。幸か不幸か自分は今後このような人生を歩むことはないのですが、だからこそこういう話に幻想的な憧れを抱くのだろうなあ。
・日比野心労「雁木町、本町大町桜町」
安倍公房に「砂の女」がありますが、こちらは雪女ではない「雪の女(たち)」の物語と感じました。街から抜け出せない主人公の周りに現れる、四季を思わせる名の女たち。皆を捉えているのは怪物のような「冬そのもの」であるけれど、むしろ街を上げて対処せねばならないという「共同体意識」が人を縛るのかも知れません。夏美ちゃんがえっちだ……
・池澤春菜「たった一度の、透明な」
国際線の航空機トラブルで偶々降り立った見知らぬ街での、見知らぬ人との出会い。自分が相手を知らないように、相手も自分を知らない。だからこそお互い、鏡のように透明になれる時間と場所。偶然の出会いは、しかしひとたび現実に立ち返れば二度と戻れることはなく、二度と再び会うことも無く。
・西崎憲「灰色の都」
これは文章で酔わせるタイプの作品でしょう。異世界のような、外つ国のような、それでも我々とは地続きの世界で描かれるのは、視点人物たる主人公の隣に立つ女性フラナリーの在り様。恋人のようなそして妹のような二重性は、優しさと冷酷さを併せた2つの人格を持つ二重性と共鳴する。「われわれは自己を中心に考えることしかできない」として、主人公がフラナリーに見ているものはなんなのだろう?
街がテーマなんだけどなぜか印象に残ったのは「女の話」だなあという気がする。なんでだよ俺(´・ω・`)
