- 作者: チャールズ・L.グラント,宇井千史
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1989/06
- メディア: 文庫
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1980年代末期〜90年代初頭に東京創元社が青背の文庫で出していた「創元ノベルズ」モダンホラーの一冊、「オクスラン・ステーション」シリーズの第二巻。同シリーズは日本では3冊が訳出されたけど本国アメリカではもっと続いたようで、未訳分の登場人物(吸血鬼)がひとりキム・ニューマンの「ドラキュラ紀元」に端役で出てたりする。
ロバート・フォールコンの「ナイトハンター」シリーズ*1と並んで創元ノベルズモダンホラー部門の看板だったような気がする。昔確かに3冊ともよんだのだけれど内容はすっかり忘れていましたねえ。ニューイングランド地方はコネチカット州の片田舎に座す架空の街オクスラン・ステーションを舞台に、そこで起きる様々な怪異・怪事件を独立した作品群で描いた連作シリーズでした。それぞれの話は主人公も変わるし直接の関係は無いけれど、前巻の登場人物がカメオ的に出ていたりはしたかな。シリーズが長く続けば街並みや人々の姿にだんだんと実感が積み重なっていくような感はあります。
今回たまたま第二巻「真夜中の響き」*2を読み返して今更ながら気がついた、それぞれ女性を主人公に据えて一話完結的なストーリー作りはこれってコージーミステリーみたいな感覚なんですね。今回のヒロインのデイルは両親が残した玩具店を経営するそれなりに自立した女性で、高校教師のヴィクターという恋人が居ながら決定的な一歩を踏み出せない心理心情、事件をきっかけに進展する二人の関係とかいろいろとコージー的です。現代アメリカだとティーンズ向けにヴァンパイア恋愛小説とか普及しているらしいのだが…
まあ、なんだろうなホラー小説としては手堅くまとまった、こじんまりした一品です。著者のグラントは「Xファイル」のノベライズもなども執筆していて(当時翻訳もされてましたな)、「まとめる」という事には習熟しているよう。とはいえ、ある種の御都合主義、展開のスピーディ過ぎるきらいもありますけれど。
ネタバレすると現代アメリカの小都市にケルト神話を持ち込んでのモダンというより伝奇小説な風味なのだけれど、思い返せばあの頃「モダンホラー」と呼ばれていた作品の多くは伝奇モノな側面を持っていたような。無論そうでない書き手もいましたし、記憶に残るのはむしろ後者の側だったように思いますが。
*1:http://d.hatena.ne.jp/abogard/20071224
*2:原題“THE SOUND OF MIDNIGHT”を直訳してるんだけどまーベタなタイトルですな