神奈川県立近代美術館(鎌倉館)で「岡村桂三郎展」を見てきました。
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/public/HallTop.do?hl=k
まずその巨大さに圧倒される。薄暗い照明の中に屹立する木製のパネルは屏風絵というよりは壁画で、マチエールに直接刻み込まれた線と色から諸作品が絵画ではなく二次元的な彫刻のようだなぁ、などと思う*1。神話伝説的なモチーフとも相まってまるで「D&D的な」*2迷路を歩いているような、そんな気分にさせられる。図録ではプリミティブな観点からラスコーなどの「洞窟」といっているが、総じてダンジョン的な楽しさがある。物によってはパネルの裏まで見られるのである種「学園祭」的ですらある。いや実に、楽しい。
美術作品をみるには適切な距離というものがあって、それは個々人に於いて違うし、その上で作品ごとに当然異なる。是々非々的に対応される。思うにこの展覧会の出品物はどれも巨大過ぎて近くでは何が描かれているのか良くわからない。モノトーンの作風と薄暗い照明はさらにその判り難さを加速させ、とらえどころがない。これを図録で見れば一目瞭然、なにがどのように配置され、全体としてなにが描かれているのかはっきり判る。捉えられる。
でもそのことは会場で現物を歩きながら味わった「わからない」や「とらえどころがない」楽しさに到底及ばないのだ。一番見たかった「獅子08−1」――これは非常によい距離感で鑑賞でき、会場配置に大変感激した――はもうじき東京でやる別展*3に出品されるんだけど、ちょっと無理して遠出した甲斐があったというものだな。
ちなみに同一チケットで入場できる鎌倉別館の「小宇宙(ミクロコスモス)への情熱」
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/public/HallTop.do?hl=a
では本館とは対照的に小さく細密なものを中心にした版画展で、これは近寄って「目」で見ないと面白くない。サイトには三枚しか作品が上げられていないけれども、幻想的な作品など数多くあってこちらも非常に楽しめた。往時に社会思想社や東京創元社から出てたFFすなわち「ファイティング・ファンタジー系」*4のゲームブック好きの同志には強固にオススメする。
*3:http://www.newotani.co.jp/group/museum/exhibition/nikkei_200811/index.html
*4:どんな拷問に遭わせられようとも「ファイナルファンタジー」などとは言わぬッ!