
- 作者: W・H・ホジスン,井辻朱美
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1985/08
- メディア: 文庫
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「幽霊狩人カーナッキ」*1のホジスンが自らの船員経験を活かして描いた海洋恐怖小説の短編集。紹介を得てから随分と時間が過ぎてしまった…理由の一つは自分で手に取った「異次元を覗く家」asin:4150100586がイマイチだったんで手控えてた面が大きかったり、するのだけれど。
ホジスンはラヴクラフトの先駆者的な観点から語られることも多い人で、実際「異次元――」がかなりのコズミック・ホラーだったようにこの「夜の声」に収録された小説群も相当ルルイエ的(笑)な何かに溢れている。なるほど両方合わせると確かにクトゥルフが出来上がるのかも知れないな。心配していた冗長さもなく楽しめて、多分この人短編向きな作家なのでしょうねと思いつつじゃあ大長編「ナイトランド」はどうしようかナー。
表題作は映画「マタンゴ」の原案になったと昔から聞いてはいたが、映画は相当アレンジ…というか最早別物で気にしない方が宜しいと思われ。原作小説は短いながらも一種独特の、何とも言えない余韻があって不思議な作品だなあと思う。これ純愛小説なんだぜ?他にも「グレイケン号の発見」は徹頭徹尾不可解でなにが起きてなぜ解決したのか理屈では全然説明できないのに、極めて日常生活的なところへ落着するのがちょっと楽しい。ほぼ全編そうなんだけど廃船であれ島であれ、たまたま海で見つけた不可解にひょいひょい乗り込んでいくのはこりゃ船乗りの習性なのかは。
サルガッソー海とか無人の漂流船とか、なかなか現代では味わえないクラシカルな海の恐怖が連発される。ガキの頃読んだ子ども向けの「世界のこわい話」だったか、そんなような本の元ネタを見ている気分で楽しくもなるけれど、現代でこの手の物が成立しにくいのは、やっぱ科学が進んで海の神秘も無くなったからだなーと一升の寂しさが。わたしたちはわかりすぎてしまったのだ。
わかっていただきたいのだが、わたしがお話ししているのは単純素朴な事実なのだ。お伽噺でもなければ、話はまだ終わってもいない。この話でおわかりだろう。海ではまことに奇妙なことが起こるのだし、この世が続くかぎり起こりつづけるのだと。海はあらゆる神秘のふるさとだ。なぜなら人間にとって海の調査探検はまことに難しいことだから。で、先を聞いていただきたい。
中川翔子がしんかい6500に乗り込むこのご時世*2、海の怪異になにが「無い」のか言ってしまうことは簡単だ。でも、それでも未だ尚、わたしたちは海になにが「在る」のかを、すべて知っている訳ではないのだ…
ところで本書には「水槽の恐怖」なる非海洋作品も一編採録されていて、これはカーナッキの先駆をなす物と解説されている。成る程確かにその通りでギャグとギリギリ紙一重なところはカーナッキにそっくりだッ!!
「うむ」と医師はうなずいた。「清潔第一という教訓じゃな」
そーゆー問題じゃネェ━━(゚Д゚;)━━ッ!!
と、思いますた。「あれはなんだったんですか?」「わからん」ってすげェ解決だなおいw
<追記>
直接関連はないけれど、今月の「SFマガジン」がクトゥルー神話特集でした。
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- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/03/25
- メディア: 雑誌
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表紙オブジェはりとくとの雪狼さんですよ♪チャイナ・ミエヴェルの「細部に宿るもの」とF・グウィンプレイン・マッキンタイア「イグザム修道院の冒険」が面白くて、ケイオシアムのRPGってよく出来てたんだなーと変なところで納得した。*3
<さらに追記>
映画の方の「マタンゴ」、デアゴスからDVD出るんですね〜
http://deagostini.jp/ttd/backnumber.php?id=10413&issue=15
これと「キングコングの逆襲」は全然ソフト化されて来なかったんでちと楽しみだったり。「緯度0大作戦」はむかしオールナイトで見て…(交信途絶)