- 作者: H・R・ウェイクフィールド,南條竹則
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 文庫
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日本人の手によって編まれた英国調怪奇小説アンソロジー。「調」ということで英国外の作品も含む。
例によってじわじわ読む。が、じわじわ来るどころか冒頭に掲載されまた英語タイトルにもなっているウェイクフィールド「ダンカスターの十七番ホール」のあまりの理不尽さにあわてて直球から身を避ける気分に(苦笑)理不尽とは「ことわりのつきないこと」で理屈も解決もあったものではない、原因も判然としなければ被害者に因果の応報があるわけでもなく…ただ、そういう事が起きました。と、まるで自然現象であるかのような語りだなー。それに続く2作品、エリザベス・ボウエン「魔性の夫(つま)」もリチャード・ミドルトン「棺桶屋」も、どちらも「なぜ」の解明がまるで尽きることがなく、そういう不条理な怖さが楽しい。まさしく「怪」談の悦びとはこのことか(笑)
と、それだけではない。同じくミドルトン(この人だけ二編採られている)「羊飼いの息子」はどこかユーモラスさも秘めた地方の怪談だし、グラント・アレン「ウルヴァーデン塔」は英国カントリーハウスを舞台に建造物の怪を扱った正当派な伝奇小説と味わいは多岐に満ち、とりわけお気に入りはラドヤード・キプリング(ですよ!)の「『彼等』」ですか。盲目の夫人と「私」と私の目には見える子どもたち。編者による丁重な解説がなければこの話の良さ、美しさはわからなかったろうな。「私」にも見えない子どもがいたのだと、大変に綺麗な逸品です。
巻末は解説に変えて南条竹則の少年時代の思い出が、往時いくつも聞いた怪談と共に記されている。小学校時代地下鉄銀座線(駅に掛かる度に車内の照明が暗転する、あの昔の銀座線)の先頭車輌でトンネルの先の暗闇を見据えながら、同級生で呉服屋の娘のSさんから聞いたこわい話がってそのシチュエーションのほうがだだ萌えですから!!!