- 作者: 川崎草志
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/05
- メディア: 単行本
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現在は角川文庫で刊行されているが(kindle版もあるのか…)自分が読んだのは初版のハードカバー版。第21回(2001年)横溝正史ミステリ大賞受賞作で巻末には当時の選評も載ってて初野晴の名前などが見られてそれは面白かった。
さいたま新都心のゲーム製作会社で起きた心中事件と四国は愛媛県で起きた同級生の射殺事件。仕事場と郷里で同時期に発生したふたつの事件に共通項を発見したヒロインの汐路は、やがて生まれ故郷の早瀬市が全国でも群を抜いて殺人事件の発生件数が高いことに気づき…
あらすじだけ書いてみると2時間ドラマみたいですが、短い中にもインターネットや建築物ストレス、都市と地方の格差因習にストーカーや(ネタバレに付き秘密)など様々な要素が撒かれていて、なかなか面白かったです。事件を解決する側、主人公サイドの人物がわりと乱暴、ダーティな方法で推理探索するところはユニークでした。出来る系の女子が中学生をアゴでこき使って死んだ友人のPCからハードディスクを盗み出させてくるとかたまらぬw
流石に10年以上前の作品なのでネット環境、物理的なそれよりもリテラシーの高低や人とネットの関わり方がいまとは随分違っているのはむしろ当然で、ある種の懐かしさ*1を覚えたり。それはそれとしてイマドキの小中学生向けにネットリテラシー教え込むようなフィクション作品はあるのかな?「道徳」の授業や教育TVの人形劇でまかなえるのかな〜と、そんなことをふと思った。
憎悪と呪詛の長い腕が人を縛るようでいて、最後にヒロインが気付くのは父親からの慈愛に満ちた長い腕だ。ダブルミーニングのタイトルはなんかいいですね。
そしてゲーム会社の製作現場がとんだ修羅場だってことは10年前も10年先もずっと変わらないんだろうな(笑)
*1:顔見知りの関係の方がネット上でケンカすると手がつけられないなんてことは昔よくあったもんです。今はもう、それどころではないが