紆余曲折を経て漸く全話視聴。映像記録を貸与戴いた友人に感謝を。
よく出来たアニメだなあというのはリアルタイムで第1話を見て以来ついて回る感覚で、あの地味な原作を良くここまで脚色出来たものだと感心する。その一方で良く出来過ぎじゃないかと疑義を挟むところ無きにしも非ずで一部は若干、演出過剰気味に受けとったことも確かだ。過剰だと感じるのはあくまで日常生活の風景やキャラクターの行動で、観念を映像化する推理説明のパートを極めて自然に受け入れたのはちょっと面白い視聴感覚です。原作とは随分味わいを異なるものとし、さりとて「原作レイプ」などとは非難されない、良い形の映像化だったと言えましょう。
福原里志のキャラがエキセントリックに描かれすぎで、ちょっと割を食ってるかな。「クドリャフカの順番」編での彼の立ち位置、行動原理を「わかりやすく」変えたことは果たしてよかったんだろうか、結果としては随分違うお話しになってた気がするのですが。でもほんの1カット表情をつけ加えるだけで「囲碁部の谷君」の行動原理はああそういうことなのかと、その辺の見せ方はホントに巧みで、劇場作品並みのクオリティを2クール放送保ち続けたことは近年まれに見る偉業でありましょう。
キャスティングも豪華でね、最終話「遠回りする雛」での町内会役員大御所過ぎって話題になったけど、ほんのわずかなシーンだけの登場人物にもかなり名の知れた役者を起用して、且つ非常に上手い配役である。具体的に言うと漫研の河内先輩を演じる浅野真澄がいい感じにウザカワイイ。ますみんの演技があんなに自然なのって初めてみた。地で演ってんじゃないかってーぐらいにウザいのはスゴイな(褒めてますよ)放送前後の当人の言動から推理するに、ノーパ○でアフレコスタジオ入った作品ってこの「氷菓」じゃないかと推理するのだが、さて。
糸魚川教諭を演じた小山茉美、入須先輩を演じたゆかなと、この二人の演技も実によかったと思います。二人ともなにか嘘を吐いていると「匂わせる」微妙な緩急の付け方が実に良かった。そして「――雛」で原作には無い、生き雛行列が終わった後での奉太郎と入須先輩の会話シーンを挿入したのは、その後で千反田えるの置かれている立場を際だたせる、よいプラスアルファでした。
ひとつひとつのシーンの見せ方、作り方というものがとても「解りやすい」かたちで構成されているので(アニメに限らず)お話作りを勉強したい方にはよいテキストと成り得るかも知れませんね。やはり名作です。
まーなんだな、古典部一同常時イチャイチャし過ぎじゃネーノと鼻白む気分もあるのだけれど、その辺はイマドキの営業スタイルってことなのかな…