- 作者: 伴名練,シライシユウコ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/10/23
- メディア: 文庫
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第17回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作ということで巻末に講評が載ってた。4名の審査員の評から面白そうなところをつまんでみると「ファイナリストのうち五十代が最多だった」「今回も幼女の性的虐待を扱った応募作がいくつかあった」とかでおおぅホラーですね日本(マスコミみたいな発言の切り貼りはヤメロ!)
で、本書は「数少ない二十代の作品で、練達の五十代の筆に無いフレッシュさが評価された」作品で短編「chocolate blood, biscuit hearts.」が併録されています。どちらも短い作品で読みやすい物ではありますが、なかなかに読ませる内容。そういえば「結晶銀河」に収録されてた作品*1も面白かったよなこの人。
本書収録の2本ともホラーというよりホラーのふりをした恋愛小説のようでした。特に「少女禁区」の方は実に良いツンデレで、どれぐらいツンデレかというと髪の毛織り込んだ呪詛人形を釘でツンツンどころかドスドス刺しまくるとゆーああ恋愛って怖いねホラーだね。なぐらいにツンデレです。などと冗談はともかく、少ない描写で意図的にぼかしたような語りが成されているので、うっかり読んでると気づかずに読み飛ばしてしまいそうな男女三人の関係性がなかなかムフフでありました。「噂好きの少女」にどんな尋問したんでしょ、「不格好な蝶」を使って…
「chocolate―」のほうも土壇場で読者に強烈に訴えかける語り口が魅力で、ごく薄い文庫本の割には充実して楽しめた気がします。
「少女禁区」なるいささか煽情的なタイトルは出版刊行にあたってのもので、応募原稿の題名は「遠呪」であったとか。テーマ的には当初のタイトルの方が実は合致してるんだけれど*2、まあ煽情的な方が営業的には宜しいんでしょうな。
*1:「ゼロ年代の臨界点」が収録されてるけど「結晶銀河」の感想http://d.hatena.ne.jp/abogard/20130311ではふれて無かった…