- 作者: エドワード D.ホック他,日暮雅通
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2009/07/25
- メディア: 単行本
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- 作者: スティーヴン・バクスター他,日暮雅通
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 2009/12/24
- メディア: 単行本
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2009年に邦訳が出た、原題を“The Mammoth Book of New Sherlock Holmes Adventures ”という大判のアンソロジー。26人の作家による26編の作品群は確かにボリュームの大きいものだけれど、基本的にはコナン・ドイルのオリジナル(“正典”と呼ぶのでしたな)に寄せた形のパスティーシュがほとんどなのでこじんまりした話が多い…か。良く聞く名前も散見されるけど入れ込んで読む作家も無いよな…と思ったらなんとマイケル・ムアコックとベイジル・コッパーが載っていたのでそれだけ目当てに図書館から借りてくる。しかしなんつーベタな装丁だろうねえこれ(w
マイケル・ムアコックによる「ドーセット街の下宿人」は黒い魔剣を振りまわす虚弱体質の彼などまったく出てこない、実に正統派なホームズ作品でした。ベーカー街221Bの内装リフォームのあおりで一時期ハドスン夫人の義理の妹が営むドーセット街二番地の別の下宿に身を寄せて…ではじまる物語、実は1995年に当のこの番地に建つゲストハウスの宿泊客向けに作られた限定200部の私家版ということでつまり同人誌である!ごく薄い!!本で!!!あります!!!!
ホモじゃねーよ(´・ω・`)
話の節々に新しい下宿の住み心地の良さや料理の美味しさがさりげなくアピールされていて、ムアコックもこういうタイプの作品書くんだなあと嬉しい驚きです*1
ベイジル・コッパーについてはコナン・ドイルよりもオーガスト・ダーレスとの兼ね合いで知ることが多い人なのだけれど*2「悩める画家の事件」はコッパーによる最後のソーラー・ポンズ作品集“Solar Pons: The Final Cases”から採られているとのことで、ソーラー・ポンズものの中にシャーロック・ホームズ作品が含まれている本なのでしょうかね? ともかくややホラーがかった風味を感じる、アーカムハウス系な作家らしい一品ではありました。
変わったところではスティーヴン・バクスターが「慣性調整装置をめぐる事件」でH・G・ウェルズを登場させ、後の「月世界探検」やバクスターの諸作品との関連性を見せるような話を書いているけれど、殆ど多くの作品は例えばドイルの著作に事件や関係者の名前だけ記された手がかりを膨らませて作品化したようないわば「正統派」なもので、トンデモなホームズものがブイブイ跋扈する現代(いや昔からだけど)にあってはいささか食い足りなさも感じなくはないです…
そんな中でサイモン・クラーク「流れ星事件」はホームズが奇妙な言動を起こすと読者の目の前に突然犯人が現れる、そのギミックの意外性が何かホームズらしくてよかった。自分がホームズに求めるものって多分こういうものなんだろうなあ。
いろいろ読んでいるとやはり多くの作家に好かれるホームズ作品って決まっているようで具体的に名前が挙げられたりシチュエーションや会話の断片に影響がほの見えるタイトルがいくつかありますね。身の回りの人に「あなたの好きなホームズ作品」を聞いてみたら面白い結果が出るかもしれないな…
と思ったけれど、たぶん「犬」と「グラナダTV」がツートップだわ(w;
*1:私家版では著者匿名だったので現在かなりのコレクターズ・アイテムになってるらしい