ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

月村了衛「黒警」

黒警

黒警

ごく普通にノワール警察小説です。狙ったような展開でワザと外すのはどうやら著者のスタイルのようで、本作でもうだつの上がらぬ刑事と義侠心に富んだヤクザのもとに中国系犯罪組織と警察上層部の癒着の証拠を持つ女が保護され、じゃあこのコンビがなにか成し遂げるのかと思いきやヤクザと女があっさり消されるh*1あたりからが本番でした。その後の展開はそもそも女を連れてきた別の組織の男と義兄弟的な契りを結んで警察幹部を懲らすストーリーで、それほどボリュームも無いし話は上手く行きすぎる*2である種食い足り無さはあります。どうもシリーズ物の最初の一本で続くか続かないかは微妙な2時間ドラマみたいなノリだな。2時間ドラマというよりVシネマか。朝日新聞出版の本で巻末の刊行リストをみてたらこれがまー警察小説ばかりで流行り廃りよりTVドラマの原作が欲しいんじゃネーノと、それは邪推の類(w 話のきっかけと回収される伏線がアニメキャラの海賊製品だったり警察密着ドキュメンタリー番組だったりと、テレビを意識した小説作品であることも確かなんだけれど。

地味な話だけれど「捜査現場から証拠物件をこっそり盗み出す」とか「警察署内からニセの騙りで携帯電話を掛ける」とか地味なシーンが妙にサスペンスフルで、そこは面白かった。

*1:女も証拠物件も「マルタの鷹」で「マクガフィン」だとわざわざキャラクターに語らせるサービス精神はあったりする。

*2:そのエクスキューズもやっぱりキャラ自身に語らせている。妙に自己弁護的な内容ではある。