ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

イーブリン・ウォー「ご遺体」

ご遺体 (光文社古典新訳文庫)

ご遺体 (光文社古典新訳文庫)

いや恋愛小説じゃないけどさ(笑)アメリカの葬祭場・葬儀会社をテーマにしたブラックユーモア風味の恋愛コメディ。著者イーブリン・ウォーは「回想のブライズヘッド」がもっとも著名なイギリスの作家で、自身の第二次大戦従軍経験をベースにした「戦争三部作」と称される作品を、どこかのだれかが訳してくれないかしら。

本書は終戦直後ぐらいの時期のカリフォルニア、ロサンゼルスを舞台にしていて、当地に移住し映画産業にも寄生(だよなぁ)しているイギリス人社会の偏屈さ、遺体を過剰に飾り立てる葬儀社やそれと対照的にえらくぞんざいに扱うペット専門の葬儀社などのそれぞれの情景が、ふんだんに風刺を利かせて描かれます。ストーリィの根底は男女の三角関係なんだけど登場人物どれもヒドイひとばっかり(笑)如何にユーモアとはいえそれは黒いものなので、正直それほど笑えません。ただヒロインの名前がエイメ・タナトジェノスなんていうこれまで色々見てきた中でも相当ドイヒーだったのには笑いました。

映画「おくりびと」を見た人が読んだら激怒しそうな話だけれど、今も昔も「死体」がユーモアとコメディの題材であることも、歴然とした事実なのであって。