- 作者: ポール・ケネディ,伏見威蕃
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2013/08/24
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
原題を“Engineers of Victory”だけれどもこの場合の「エンジニア」は技術者ではなく「巧みに成就する・させる者」というような意味だそうです。技術の話、技術者の話もよく出てくるけれどそれだけではなく。
1943年初頭から44年中盤にかけての時期に起こった、第二次世界大戦の変転を五つの観点から解説したもの。「大西洋の船団護衛と対Uボート戦」「ドイツ本土への戦略爆撃と長距離護衛戦闘機」「東部戦線に於ける機甲戦」「ヨーロッパへの反攻と強襲上陸」「西部太平洋の侵攻と兵站」章題こそ違うけれど扱っているのはだいたいそんな内容です。個々の章では攻守のバランスを劇的に変えた新兵器や新技術についての記述が中核となるのだけれど、決してそれだけに焦点を絞るのではなく、そこに至るまでの過程とその後の影響まで見据えたものとなっています。トップではなく中間層に視点を当てるような記述が多くてそれは非常に面白い、のみならず著者がイギリス人なものですからまーいろんなところにイギリス寄りの視点、イギリス贔屓な文章が出てきてそれが一番面白かった。ノルマンディー上陸作戦のパートでオマハビーチよりホバートファニーズに割かれた記述の方が多いんだぜこの本(笑)*1
著者も訳者もおそらくは一般向けに書いたと思われるこの本、軍オタ的にはいささか鼻につく物言いもあるんだけれど、総じて第二次世界大戦のあまり華やかでない部分に光を当てる内容は広い読者層に受け入れられそうです。
結局は組織の力、日本のある種の人間が大好きな「イノベーション」の高い組織の力が大事だって話なんで、もしも自分のボスがこの本読んでたら要注意だ。上から目線でイノベーションすれ!なんて言うのはただのインベンジョンだよな。