- 作者: 古処誠二
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/11/29
- メディア: 単行本
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終戦記念日にこの本を読めたのはよかった。いつも書いてる気がするけれど、古処誠二はもっと評価されるべき。そしてこれもいつも書いてる気がするけれど、この人の作品の最大の魅力は「登場人物に感情移入し辛い」ことなので、やっぱり大受けはしないのかな。例のアレよりよっぽどいい作品を書いていると思うのだけれど、本屋大賞とかには選ばれ難いかも知れません。
戦争を知らない世代の作家が戦争をどう扱うか、この問題に真摯に答えることが、「登場人物に感情移入し辛い」作品を生み出す原動力になっているのではないかと、今回とみにそれを感じた。時代の違い、状況の違いはものの考え方の違いに当然影響してくるもので、戦時体制下に生きる人間は21世紀の現代日本人とは違うパラダイムに基づいている。そこで起きるいくつかの出来事とストーリーの展開を通じて得られる物語の「解」に心を揺すぶられるのがこの人の作品の良さで。
それでやっぱ「ビルマの竪琴」が響いてきてると思うのよ。これも前に書いてるけれど、本作での伊与田中尉の在り方と兵隊が合唱して終わるラストシーンと、特に強く響いている。
そして一切の「真実」はすべて尾能の推測の範囲から一歩も外に出ないという作劇がまた良かった。こういう話に名探偵など必要ないのでありまして。
「時代小説」なのだなぁと、そんなことを考えました。戦争を知らない世代の作家が戦争をどう扱うかという問題の、それも答えのひとつだね。