ツイッターのハッシュタグ「#今まで読んだ中で一番こわい短編小説」で「なにかが起こった」が紹介されていたので興味を覚えて読んでみた。なるほどこれはこわい作品で、視覚に訴える場面では聴覚が阻害され、聴覚に訴える結末では視覚が阻害される。不確かな情報に不安を煽られつつ疾駆する閉鎖空間の緊張など短い中に濃厚で豊潤な文章が構築されている。
とはいえツイートやまとめで散々内容を仄めかされていたので、まあそうだなあというか「怖」くは無かった(笑)イタリアでノンストップ超特急というと、ちょうどいまジョジョの5部アニメでやっているプロシュート兄貴とグレイトフル・デッドのエピソードにたぶん響いているんだろうなあこれも。
他にも収録作品は粒ぞろいの傑作ばかりで、不安と不信を抱えつつ何か・どこかへ向かって突き進んでいくようなものがいくつか見受けられます。何かあるいはどこかというのは要するにタナトスであって、人がいきるということはつまり不確かな情報を基に未知の時間と空間を邁進していくようなものなんでしょうね。戦いの終着駅はどこだ。
「円盤が舞い降りた」はUFO、宇宙人に対する人文的な回答として大変ユニークな内容であるし、「竜退治」に出てくる竜は、これはもしかしたら文芸作品に登場したなかでも有数に無様で弱く、儚い存在なのかも知れない。これらは特記する必要があろう。そして「聖人たち」がなんかほんわかしていい話なのであった。なにしろ聖人だからなあ…
そうかきょうは成人の日だな(笑)