以前岩波文庫版を読んだ*1もので、表題作ほか何篇かは重複している。岩波文庫版には無かった「戦艦《死》」を目当てで手に取ってみて、それ自体は如何にもタナトス溢れる小品だったけど、割と雑というか「書きたいことだけただ書いた」みたいなつくりだったので微妙ではある。架空戦艦のスペックは割と細かく設定しても、第二次大戦末期にどうやって大西洋まで出撃できたのかは一切触れないところとか(笑)また岩波文庫の方にあった「聖人たち」ほか「聖人もの」とでも言うべき作品がいくつかあって、聖人も落ち着いて聖人のままでは居られなかったりするわけでそこは興味深い。
真に驚かされたのは解説である。あまりに驚いたので直接引用する。
恋愛における挫折感に、さらに日々深刻となる戦況*2が相まって、虚脱感に襲われる。
そんな折、彼が没頭したのは『シチリアを征服したクマ王国の物語』の執筆だった。
えっ
「シチリアを征服したクマ王国の物語」って
いやびっくりした。岩波文庫版読んだ時には気づかなかった。あんなフワフワでモコモコしたお話と、矢鱈目鱈にタナトス一直線な物語を同じ人間が書いていただなんて…
なんていうか「業」ですかね?ううううむ。