ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

アルフレッド・ベスター「イヴのいないアダム」

創元SF文庫の未読を読むキャンペーンです。

「分解された男」「虎よ!虎よ!」あと「ゴーレム100」か。ベスタ―というと長編のイメージなんだけど、こちらは短編集。もともと河出から「願い星、叶い星」のタイトルで出てたものに2編追加して創元で文庫化という流れです。河出版は読んでないと思うんですが、その「願い星、叶い星」とあと「ごきげん目盛り」は既読でした。

ベスターの長編はどれもインモラルというかなにか不穏当で不健全 不謹慎、そうだな不謹慎だな。なイメージがあるんだけれど、基本、短編でもそれは変わらないな…と、思いました。主人公となるキャラクターの行動原理、倫理規範、どこかモラルのタガを外したようなストーリー。そういう作品が多い。タイムトラベルネタとか、何らかの理由で人類が滅びて「地球最後の男(必ずしも最後ではないし男とは限らないが)」的な存在となる話も複数。いちばんボリュームがあるのは中編「地獄は永遠に」だけれど、個人的には「地球最後の女」となったヒロインと「地球最後の男」との出会い、そしてはじまる奇妙な共同生活を描いた「昔を今になすよしもがな」がよかった。どこか薄氷を踏むような危険が垣間見え、お互いになにか狂気を隠しつつ、突如として急展開を迎え謎のままに物語は終わる。よいねえ。

最後に配置されてる一本「くたばりぞこない」が、これまた地球最後の人類ネタなんだけれど、最後に発せられる言葉と行動がものっそ不穏当で不健全 不謹慎でクソワラタ。あのセリフにそういう感情を乗せるのはなかなか無いぞ。

「わしが地球最後の人間だ」と彼は叫んだ。

いやホント、マジでワロスワロス