ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

梶尾真治「チョコレート・パフェ浄土」

 

えっとこれ1988年刊行だからだいたい40年ぶりぐらい?に再読しています。そこかしこに1980年代の日本がそのまま延長されているようで、複雑な心境になる(それはゼータガンダムに出てくる未来のホンコン・シティが現実の1980年代香港を延長しているようなものですね)。

梶尾真治の短編SF、昔はずいぶん読んだものです。決してサイエンスとは言えないかもしれないけれど、ワンアイデアでワンダーな作品がいくつもありました。今回読み直そうと思ったのはミズムシにプルトニウムを浴びさせたら怪獣化して人を襲うというバカSF「魔窟萬寿荘」が目的なんだけど、これも途中から鉄人28号のパロディになったり平田明彦みたいなマッドサイエンティストが出てきたり「そういうものがパロディ化され、ギャグとして消費される」1980年代の雰囲気そのままだ。ゆうきまさみが世に出た頃ですね。この「魔窟萬寿荘」オチがすごくて、何をしても敵わないスーパー白癬菌怪獣を倒す最後の手段が話と全然関係ない地上げ屋が突然ボロアパートに放火して焼死なのである。「フランケンシュタイン対地底怪獣」かーい(80年代風のツッコミ)。しかし「へぇ、悪魔の石井部隊って獅子王の編集部のことではないのか」という業界楽屋オチのギャグは、これも無形文化財だよ保存しようよ!バブルバブル*1

表題作になっている「チョコレート・パフェ浄土」は40近いおじさんがチョコレート・パフェを食べるのはちょっと恥ずかしいという、いまの世の中だと誰もそんなこと思わないようなテーマだし、人類が初めて金星に到達した地が単なる観光地になり果てているという「”希望基地(ホープ・ベース)”にて」で描写される観光客というのは明らかに「我々」であってインバウンドなものではない。いろんなものが当時の時代性を示す中、高橋良平による巻末解説では

”五〇年代SF”フレイバーに包まれた短篇SFの名手

と評している。当時としてもやはり古さはあったんでしょうね。とはいえ、自分がSFの細道に分け入った時期に、コミカルやリリカルやちょっとしたホラーやライトな宇宙や、多彩な作品が様々に入っている梶尾真治のSFというのは、だいぶ栄養の基盤になってたんだなあと、改めて思う。その後傑作選みたいなのも出たけれど、そこには拾われなかったものも含めて、カジシンのSFはいまでも読まれて欲しいものですハイ。

 

*1:この作品、初出が今は無き朝日ソノラマの小説雑誌「獅子王」なのです