ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ジョー・ウォルトン「図書室の魔法」(下)

うーむ、なんだか何事も起こらずに物語が完結してしまったぞ。あーいや、一応のクライマックスとして母親と魔法で直接対決したり死んだ妹と本当に決別する場面はあるが、全体的には本好き女の子が彼氏ゲットしてラヴハッピー!こんどSF大会行こうねと、そういう話である。むろん「信用のおけない語り手」として額面通りには話を受け取らない解釈もアリでしょうが、それについてはどうぞお好きにという感じである。

ロシア人を皆殺しにするための核兵器を造るお金があるなら、全国の図書館にまわせばいいのである。図書館を充実させることに比べたら、イギリス独自の核抑止力なんてどれほどの価値があろう?

ファシストハインラインが?」つい声が大きくなった。「それってどういう意味?」
「つまり、彼の作品には権威主義的なものが多いだろう。いや、子供向けの本はそんなことないよ。しかし『宇宙の戦士』なんかは、ああいう内容だ」
「じゃあ『月は無慈悲な夜の女王』は?わたしは反駁した。「あれは権力に抗う革命の物語でしょ?その点は『銀河市民』も同じね。ハインラインファシストなんかじゃない。人間の尊厳や責任、誠実さや義務感といった昔ながらの価値観がどれほど大切か、作品のなかで訴えているだけ。そんな彼をファシストと呼ぶのは、見当違いにもほどがある」

(略)

「君は本当に変わっているよ」手にしていたコーヒー・スプーンを置き、彼はわたしの顔をまじまじとみた。「ぼくとルーシーの噂より、ハインラインの評価のほうがずっと重要なんだものな」
「あたりまえでしょ」

モリ萌え(´∀`*) それがすごく大事です m9(・∀・)ビシッ!!


女性作家ならではの観点で書かれているので女性読者ならまた違う感想を得るのかもしれない。SFだけでなくオカルトの、いわゆる視えちゃうひとにもおススメである。巻末には本書登場作品リストがあってこれがまた労作だなあ。ここからいろいろ読んでみるのも楽しいでしょう。邦訳は絶版本が多いかも知れないけれど、それこそ図書館を使ってね。