ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ホルスト・シャイベルト「奮戦!第6戦車師団」

奮戦!第6戦車師団―スターリングラード包囲環を叩き破れ

奮戦!第6戦車師団―スターリングラード包囲環を叩き破れ

この本は相当昔の刊行で、amazon.jpではユーズド商品でしか取り扱いがない。当時全然売れなかったそうで*1後に「宮崎駿推薦!」とか帯を付けて売られていたそうである。あるところで面白いと聞きつけ、人から借りてようやく読めた。

すごく、地味な本だった(笑)

原題は「スターリングラードまで48キロ」というもので、第二次世界大戦の激戦の一つ、スターリングラード包囲戦に於いて救援部隊として投入されたドイツ陸軍第6戦車師団の戦記である。スターリングラードの中の人の話はよく聞くが外の人のものは珍しい。とはいえ、地味である。1942年12月の話なので有名なタイガー、パンサーといった華やかな戦車は全然出てこない。4号戦車長砲身型*2がドイツ軍最強戦車だが、主力は5cm長砲身の3号L型だ。地味な機甲師団だ。

記述はやはり地味である。淡々とした文章で、間違ってもヒロイズムやカタルシスは期待できない。戦争とはある意味、事務作業なのかも知れない。
しかし、実際に行われた無線交信記録や戦闘日誌からの直接引用は新鮮で、他に類を見ない。ユニークな内容ではある。第二次世界大戦当時の地上戦闘で、命令がどのように発せられ、現場の部隊が不確定な現実にどう対処していくのかという「実相」に触れられる気はする。

著者は実際にこの戦闘に参加した中隊長であり、このクラスの人物が著述した戦記というのも結構珍しいと思う。

…みんな死んじゃうから(ぼそ)

しかし「国防軍報告」(要するに「公報」だな)ってやっぱり実情とは無関係で、空しいものだなァ。

*1:自身は安っぽいタイトルとハードカバーで高価(2200円)の割には頁が薄いので敬遠していた

*2:いまはもうF2型とは呼称しないんだったかな