- 作者: 小松左京,安倍吉俊
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/15
- メディア: 新書
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大規模書店に行くと時々「ここには自分の知らない、読めばきっと面白い本がいくつもあって、自分自身はそれを見つけることはないのだ」という諦めにも似た気持ちを抱くことがある。奇しくも「青い宇宙の冒険」は自分の生年に初版刊行された作品だが今日までその面白さを知ることはなかった。勿体ない話だ。
ここのブログに挙げているのは自分が読んだ内でも面白かったり、なにか感慨を抱いたり、ひと様に伝えるべき(と感じた)情報を含む物であったりする。しかし、これほどまでドキドキワクワク、心躍らせながら読み進めたものは他にない。非常に面白く、何事か感慨を抱き、そのことをひと様に伝えたい物だと、ひどく思ったわけである。
自宅の地下で起きたちょっとした怪異が、学校の先生に相談すると実は歴史的な背景を持つ物だと明らかになり、調査を始めればそれが世界的な事件であると判明し、さらには宇宙その物の存在に関わる…パースペクティブなSF小説である。分量としては短い物なのに、ページをめくるたびにスケールが広がっていく高揚感は実に楽しかった。夢あり、希望ありでとても日本が沈没したり細菌兵器で人類が滅亡したりする話を書いたのと同じ人とは思えない(笑)
教師というキャラクターが実に善良で、子どもの範たるべき人物として描かれている。それは当たり前で本来教師とはそのような存在でなければならないはずだ。けれども多くの場合ティーンエイジ向けの作品(小説に限らず)に於いて、私たちは「教師」というものを批判的に捉えすぎているし、その方が実存性があると感じているフシがある。それは、よいことなのかな…*1
いま、同様の話を書けと言われたら厳しいだろうなとも思った。意志の力で世界が救われると考えるほど自分は無謬ではないし、それになにより本作で最もカッチョイイ人物である東アフリカはタンザニア共和国出身ダトゥーカ族の地球人ギサボさんは
今書いたら絶対に「…また差別的待遇だ!」と、言われてしまうだろう*2
思うに、この小説は古臭い。そしてある種のモラルを唱えている。モラルは古臭く、現実は常に新しい。それでも尚、新しい現実に相対峙して
古臭いモラルを唱えてみても、良いのではないだろうか。