- 作者: カート・ヴォネガット,飛田茂雄
- 出版社/メーカー: サンリオ
- 発売日: 1984/03
- メディア: 文庫
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古書店で入手。早川文庫版もあるが入手状況は大同小異と思われる。
ヴォネガットを10代で読むのはあまりお勧めしない。自分がもっとも読み込んでいた時期は高校生の頃だが、確か「宇宙チーズバーガー理論」なる宇宙論を構築しようと足掻いていた憶えがある*1
様々な講演や雑誌によせた記事を収録したエッセイ集。ヴォネガットの諸作品と同様、政治や文明や人間性など内容は多岐に渡り…そして根底に流れている思想、空気のような物は変わらず一本筋が通っていると思う。
世の中というのはどうしようもない所なのだ。あなたが思っているよりもずっとずっとひどい所で、ロクでもないベクトルで動いている。だから、*2わたしたちはこの場所でよりよく生きるべきなのだ。
といったところか。
ところで収録されているエッセイのほとんどは1970年代のものであり、当時アメリカが直面していたベトナム戦争の問題が取り上げられている部分も多い。大統領はニクソンの時代なのだが
しかし、われわれアメリカ人が今後も、ひとりよがりで、無知で、頑迷な人々を政界の大物として選びつづけるだろうとは、本気で考えている。母親の膝の上で共通して学んだ彼らの盲目的な熱情は、われわれをさらに多くの崇高な実験*3へと駆り立てるだろう
人類はふたたび団結協力の機会を失うだろう。そういう実験は大部分の人間にとって不可解であり、おまけに苦痛だし、無駄も多いからだ。崇高な実験者たちにとって、人類は欠陥機械みたいに見えてくるだろう。彼らは機械をスムーズに働かせるため、警察官や軍人に命じて機械を激しく叩かせるだろう。
実験者たちは、警官や軍人がふたたび大衆の前で面目を失墜するよう無理やりし向けることだろう。
残念な話だ。
この文章がショックなのは30年前に書かれた文言が現代にそのまま当てはまるということではなく、これから30年後の未来でもほぼそのまま当てはまるだろうと思えることだ。
残念な話だ。