- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,村松潔
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/09
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (21件) を見る
再読。
初読時えらく面白くて読書好きの知り合い――つーかま、本読みの師匠だ――に進めた憶えが。以下その時の会話を、うろ覚えで引用。
俺様「いやーこのトマス・H・クックって作家は初めて読んだんですけど面白くって」
師匠「初めてじゃねーだろ」
俺様「え?」
師匠「前にクックの『緋色の記憶』を貸してやったことがある」
俺様「え?え?」
師匠「その時のてめーの感想は『いや別に。特に何も』とかだったよな(怒)」
俺様「え?え?え?(汗)」
本読みにはよくある話なんだぜ?
閑話休題。再読してやっぱり面白いものである。昔「リバー・ランズ・スルー・イット」って映画があったけれど、なんとなくそれに似ている。*1
堅物の兄と闊達な弟。正反対ながら慈しみ合う兄弟。やがて降りかかる悲劇的な死。
事件現場から姿を消した「運命の女」を追って、兄は真相を探っていく。なぜ弟は殺されたのか、なぜ女は殺したのか。時系列は混在し、カットインやフラッシュバックを多用して物語は叙述され、それが効果を上げている、と言えるだろう(ややネタバレだが)遂に明かされる「真相」は非常にささやか、つまらないものであり、ごく普通に書き進められてたら本をブン投げていたかも知れない(笑)
しかし、叙述は普通ではなかった。伏線の張り方は意味深で、伏線の回収は巧みだった。それが良かった。そしてつまらない真相にどれほどの人たちが非道く振り回されていたか、というギャップも良かった。
物語の上に印象が乗っているわけではなく、印象をつなげていくうちに物語りが出来上がるような、そんなイメージかな?
そしてなにより「心の砕ける音」で一番良かったのはすべての人にはすべての真実がある、ということだった。真実は常にひとつ!では、ない。
真実とはなんぞや。
愛、そして罪。*2